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「えっと、課題提出で来たんですけど、薮先生いらっしゃいますか」


涼「ああ、材料力学の子。薮は今席外してるんで…」


慧「代わりに僕が受け取りますね」


「はい、………ぇ? 高槻…先生…?なんでここに………」


涼「あは、分かりづらくてごめんね、民俗学の高槻先生はこの人の遠い遠い親戚なんだ。で、こちらが」


慧「工学部建築学科、喜多研 講師の伊野尾慧です。来年授業で会うと思うから、よろしくね。」


「親戚、ですか……」




うんうん、分かるよ。俺も最初は似すぎててビビったもん。
1年生はまるで怪異にでも遭ったみたいな表情で、部屋を出ていった。




涼「なんか久々に『喜多研 講師の』って聞いた気がする。……早く“伊野尾研”になるといいね」


慧「どうだかー。喜多のじいちゃん、急に海外行って帰ってこなくなるからなぁ…オレ院生の頃からずっと留守番係だもん……」


涼「確かにいっつも伊野尾ちゃんいた気がする(笑) 伊野尾研出来たら、俺すぐ入るからね」


慧「相変わらずやまちゃんは俺のこと好きねぇ〜。喜多のじいちゃん泣くぞ」




伊野尾ちゃんによると、30代も前半で准教授になったアキラ先生は異例中の異例らしい。完全記憶能力はもちろんのこと、民俗学者が少ないのも理由なんだと。



『顔はおんなじなのにねー。』

伊野尾ちゃんはよくこう言うけど。


『顔一緒だけど…どうなの?』

“事情”を知っている友人にも聞かれるけど。




慧「かわいこちゃんには おせんべいあげちゃおっかな?たべる?」


涼「んむ、ちょ、伊野尾ちゃん…!笑」






誰が何と言おうと、俺が 好き なのは、准教授 “じゃないほう” なのだ。





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作者名:み! | 作成日時:2021年9月18日 22時

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