32話「人生の替えは効かない」 ページ32
人々の願いを聞いてきた頭の輪っかは叩き割られ、人々を助けに行っていた羽は無惨にも切り落とされ、彼には天使と呼べる材料が一瞬にして無くなってしまった。
「堕天は到底許されるべき行為ではない。命は助けてやった事を有難く思うべき」
位の高そうな天使がそう言って天界に帰った後、俺は慌ててぺいんとに駆け寄った。
羽が生えていた背中からは血を大量に流していて、まるで壊れた人形のようにピクリとも動かないぺいんとに対して焦りすら覚えた。
かろうじて息はあったものの、なんで息があったのかに関しては今でも俺は理解出来ていない。だって、首が切り落とされていたのだから。
それがぺいんとをゾンビにした理由だろう。天使の手によって繋がれたぺいんとの頭と首は強い衝撃があるとすぐにどこかへ飛んでいってしまう。
羽が生えていた背中は見るも無惨な状態になっており、今でも生々しい傷が残っていると言われている。
「まぁ、命を許されただけ安いもんだよ。新しい役職ももらったし俺は全然気にしてないから！＿なのに、なんでお前が悲しそうな顔してんだよ」
普段は見れない、見たくもない光景を目の当たりにして正気でいられるわけがない。そもそもなんでお前はそんなに平気なんだよ。
叫びたくなるこの気持ちをぐっ、と押し殺して息を飲み込む。前髪で隠れて見えない右目はどうやら見えていないらしく、そこには穴がぽっかりと空いているらしい。
「ていうか！俺はそのくらいじゃ死なねぇから！ぺいんとさんをなめんなって！」
「……本当にゾンビみてーだな」
そんなぺいんとの罪が、今更許されようとしている？
お前らの都合で一つの怪物としての「人生」を潰されたぺいんとの人生をまた変えようとしてんのか？
それだけに収まりきらずにAまで動力源として持って帰ろうと？
「＿＿ッはは、」
思わず乾いた笑いが出てきてしまう。
長年付き添ってきた友人のことに対してこんなに感情的になるだなんて、昔の俺は思ってもみなかっただろう。
「呆れる、呆れますよクロノアさん。あんた、ぺいんとの境遇を知ってて神のお達しを受け入れようとしてんすか」
「…………」
「今、仲間を殺そうとしてんのはあんたらだろ。あいつの人生はあいつだけのものだ」
そう言って指をポキッと鳴らしてクロノアさんに掴みかかろうとした瞬間、包帯が突然俺と緑色の体に巻きついた。
「はいはい、落ち着いてくださいらっだぁさん」
「トラゾーさん…っ！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 902人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒狐 - …！前の作品も読ませていただいてました!リメイク版してるのみて駆けつけました!リメイク版も面白いですね!同じ作品を2度楽しめてこちらも楽しいです！ありがとうございます！更新応援してます! (4月23日 22時) (
レス) @page43 id: fb020f6fb3 (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無％(プロフ) - 2.3年前から読ませて頂いていて何度も読み返すほど大好きな作品です!リメイク前の方も読ませて頂いてます!変わった妖怪という世界観だったりする所やストーリー 設定などとても面白くてめちゃくちゃ好きですまたいつか続きが読める事をずっと待っています。失礼しました (7月3日 11時) (レス) id: 00e0ebd256 (このIDを非表示/違反報告)
ミドロ - なにこれ……か、か…！神作じゃねぇかよぉぉぉぉぉ！！！！更新頑張ってください！！！！ (5月30日 13時) (レス) @page14 id: 9d7832c4d1 (このIDを非表示/違反報告)
トキ(プロフ) - まだ待ってますから、どうか続きを恵んでください (2022年9月11日 17時) (レス) @page14 id: 44c169a7de (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - 凄い………私もこんなの作って見たいのですか妖怪などが思い浮かばないです……少しだけ真似してもよろしいでしょうか(土下座)続編待っています!! (2022年1月30日 9時) (レス) id: 30ab8735d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
