�将�.Deformed Mannequin ページ16
「な、何だあれ…」
「殺せんせーが拾ってきたマネキンじゃない?」
「リオちゃんの言う通り、あれは先生が拾ってきたマネキンさんに見えます」
「あーっ!皆さん、あれですよあれ!私が見た手!!」
昨日殺せんせーが拾ってきたマネキンは音楽室にいた。その周りでは、腕があると仮定した際、丁度手がある位置で、あの宙に浮く手が指揮棒を握って演奏していた。
「皆、何見ては…すんません。ちょっと下がってもらえる?」
偶然通りかかった累が、何事かと中を覗き込む。中に何がいるのかを理解した途端、彼はその場にいた全員を押し退けて音楽室の中に入った。皆が不思議そうな顔を浮かべ、言われた通りに一歩後退したのを見ると、累は箒を力尽くで折ると、鋭く尖った柄の先をマネキンに向けて刺しに掛かった。しかし、それは見えない何かに阻まれる。
「…またあの蛇の差金か、Schadenfreude!!」
「何やってんの累先生。人形が喋る訳がな「人形ではありません。今の私は、シャーデンフロイデでさえありません」…え」
カルマが驚いてマネキンを見ると、先程まで宙に浮き、指揮棒を振るっていた手は、マネキンの胸の前でそれを折れそうな勢いで曲げている。淡々とした抑揚のない声が、音楽室とその前の廊下に響いた。
「シャーデンフロイデなんて名前はもう要りません。何故なら私は、棄てられた身なのですから……まあ、あなたに理解してもらえるとは思ってませんよ、ウツさん」
それは手を燕尾服の中にしまうと、恭しく一礼をして名乗りを上げた。シャーデンフロイデと呼ばれる事を好まないのであれば、名前はないのも等しいが。
【異形のマネキン】
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作者名：御鏡 | 作成日時：2019年5月20日 8時
