�将�.Boss And Detective ページ12
授業を全て終えて帰ったAは、帰宅してすぐにルチアーノの元へ向かう。案の定、彼はリビングで新聞を読みながら珈琲を飲んでいた。
「お帰りキキョウ、学校はどうやった?…ちゃんと馴染めそうか?」
「楽しかったし、ちゃんと馴染めそう。でもね、早速皆と関係がある事が見抜かれちゃったの」
「……は?」
「その話、詳しく聞かせてくれないかね」
開口一番に一番悟られては不味い事を悟られたかも、と伝えると、ルチアーノは気の抜けた声を出し、人とは思えない勢いで和服の男…改め、ダルがAの背後に回ってソファの背もたれに手を付いた。
ルチアーノ・エルガー。常に黒いマフラーを巻いていて、口元は見えないが、その下には、ルチアーノが自ら口端を裂いて浮かべた笑みがある。それは事情を何も知らない人間からしたら恐怖であるし、Aも不可解に思っている。それでもAにとっては、否、このマフィアに所属する者にとっては恩人である。
ダルは探偵。本名はエンスピル・ダルと言うが、正直名前を呼ばれる事は少ない。何故なら、彼は三重人格であり、エン・スピル・ダルと言う名はその人格のそれぞれの名前だからだ。しかし、彼はマフィアの一員ではなく、殺人鬼達が集まる屋敷の住人の筈。何故ここにいるのだろう…
「えっと…クラスメイトの一人にね、家族らしくないけどお互いを知っているのは何故?って聞かれて……あっ、マフィアって事は言ってないよ!」
「はえー…じゃあ何て説明したん?」
「義理の家族って…大丈夫。皆優しかった。心配してくれる子もいたし、今日話せなかった子も陰で支えようとしてくれてるみたいだったから…」
「……そうか。それは良かったな。じゃあ、俺はこれで」
ほ、と安心したように息を吐くと、ルチアーノはその場を立ち去った。残ったダルは、納得できないと言った様子でAに声を掛けてくる。結局、夕食の時間、料理を届けに来たキドルに怒られるまで、ダルは彼女を解放しなかった。
【ボスと探偵】
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作者名：御鏡 | 作成日時：2019年5月20日 8時
