ウェザーリポート (ページ22)

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どういうこと？袋捨てるついでに？
いやついでで捨てるって何？

思ってもない理由にますます訳が分からなくなって口が開く。
そんな私を見て小さいお客さんは声を出さずに大きく口を開けて笑った。

「えっと、次からシールでお渡ししますね」

「……お願いします」

袋に入れたばかりのリップクリームを取り出してシールを貼って。
それを渡せばぺこりと頭を下げて笑いながら外へ歩いていった。
うん、今日は捨てずに帰っていった。

結構な間隔で雨が降るようになった。本格的に梅雨入りしたのかもしれない。
傘の売れ行きは良好。売り切れることもしばしば。

雨が降ると人は傘を買うのにどうして合羽は売れないのか。
置いてけぼり食らった合羽をそんな風に眺める日々だった。

「お前ほんま、そろそろやめときや……？」

「ふふ、何がですのん」

雨の降る夕方、リップクリームのお兄さんが来た。
今日は背丈が同じくらいの人とお買い物らしい。

「いらっしゃいませ」

そう声をかければゆっくりと目が合う。
かと思えばすぐに逸らされて、軽くお辞儀したお兄さんに代わってお友達が素敵な笑顔を向けてくれた。え、可愛い。

持ったカゴにいろいろ詰めた後、お会計にやってくる。
お菓子や飲み物、その中にぽつんと投げ入れられた値段の言い慣れたリップクリーム。

「……」

思わずそれを持った瞬間動かしていた手が止まってお財布を持って立つお兄さんを見上げてしまった。

「どうしはりました？」

「あ、や、すみません」

動きの止まった私を不思議そうに見たお兄さんのお友達に言われて目線を下げた。
無くしたのかな、捨てちゃったのかな。使い切っ……てないよね一週間くらいだし。

そんなことを考えながら袋詰めもできるようになった自分の成長に驚いた。

そのリップクリームを持って、どうしようかと一瞬にして頭をフル回転。
袋に入れるべきかシールを貼るべきか。悩んだ結果シールを貼った。

「覚えてんねや……」

ぼそっと聞こえた呟きに二択を間違えなかったと安心。
一応にこりと笑ってみて袋とリップクリームを渡した。

「ありがとうございました」

彼らを見送ったのが午後11時前。私がバイトを上がるのは一時間後。

今日も傘は売り切れで、ああ、ずぶ濡れ決定だ。
フラッシュを焚いたように光った店内に小さく息を吐いた。