rain or shine ( Black ) ページ21
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私の働くコンビニには、よくリップを買いに来るお兄さんがいる。
「何回コンビニ行くねん(笑)」
いつもお友達にそう言われながら入ってくる。
迷うことなくリップクリームを掴んで、私の立つレジへ真っ直ぐ歩いて。
……このリップの値段も見なくても言えるようになったな。
お金を受け取って、商品を渡して、ありがとうございましたを言って。
出入り口から外へ向かう二つの背中を見送る。
そして私は外へ向かう。
「なんで……？」
毎回だ。何故なんだろう。
袋に入れたままの未開封のリップクリーム。
それがどういうわけか、毎度毎度ゴミ箱へ捨てられている。
何か意図があって捨てているのだろうか。
「店長、傘の準備しますか？」
「そうだね、よろしく」
雨の匂いを察知した私は店長に確認をとって傘の棚を出す。
出入り口付近に出し終えた頃、リップのお兄さんは今日もお友達とやって来た。
「いらっしゃいませ」
「うお、」
いきなり立ち上がって声をかけたものだから驚かせてしまったらしい。
失礼しました、と頭を下げて私の定位置。レジへ戻った。
「一点で……、あの、すみません」
「え、はい？」
「いつもこのリップ買ってすぐ捨ててませんか……？」
お客さんに声をかけるなんてそんなに無いけれど、聞かずにはいられなかった。
だって何回も捨てられてるしさ。何か意図があるのかなとか思うじゃん、他に会計待ちのお客さんいないし、って言い聞かせて。
お兄さんの後ろで吹き出してる小さな人もいるけど。
「……あ、えーっと…」
ほんのり頬を赤くしたお兄さんはゆっくり眼鏡の奥の目を逸らす。
そのまま何も言われず商品も受け取られずで固まってしまった。
どうしよう、言わない方が良かったのかな。
「その、まあまあまあ、……ね」
「……ね？(笑)」
笑ってしまった。
遠回しに悟れと言われているように感じて思わず。
うん、いや分からないけどつられて友達みたいに返してしまった。
「間違えて捨ててまうねんなァ？(笑)」
「いらんこと言わんでええねん、」
くく、と堪えるように笑う後ろの彼にまた頬を染めながら言い返す。
捨ててまうとは？分からなくて首を傾げた。
「こいつね、(笑)」
小さい方の男性がニヤニヤしながら教えてくれる。
「袋捨てようとして中身一緒に捨ててまうんすよ(笑)」
「えっ」
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作者名：柿の種 | 作成日時：2018年4月1日 1時
