2 ページ14
.
「俺ねー見たい映画あんねんなあ」
ゆるゆると喋る彼は慣れた様子でリモコンを操作する。
指一本触れられないこの時間が私を妙にそわそわさせた。
こんなゆっくり過ごしていて、お金なんて貰えない。
「これ、返す」
「なんで？お金欲しいんやろ？」
「何もせえへんのに、こんなに貰われへん」
ん、と手に持ったままのお札を押し付ければ手首を強く引っ張られて。
「、！」
声を出す間もなく唇を奪われて。
頭でこの状況を理解しようとする前に、それは離れた。
「にまんえん」
ふわふわと笑うこの人は口だけで笑う。
興味無さそうに、つまらなさそうに、笑う。
可愛いのは顔とサイズ感だけ。
私の手首を掴んだ手は顔に似合わずゴツゴツしていたし、肩幅だって広い。
「あー見たいやつ入ってへん」
ぽいっとリモコンを投げて持て余すほどの大きなベッドへ寝転ぶ。
何か話そーや、そう言う割には目を閉じてて。
……なんかお預け食らった気分やわ。
そう思って少し黙ってみた。
「どしたん、急に静かなったやん」
「……」
「2万円分足りひんかった？」
鼻で笑われてちょっと恥ずかしくなる。
む、として目を逸らしてみれば、ふは、と息を吐き出す音が聞こえた。
そっと触られた頬。さっきの熱を思い出して、体が跳ねた。
それを即座に察した彼にまた笑われる。
「やーらし」
「……私、魅力ない？」
こうも頑なに手を出されないと不安にもなる。
少し首を傾げて、眉を垂らして。
そうすれば大抵のオトコは落ちてきた。
「そういうとこ」
「うん？」
「自分の魅せ方知ってる子に落ちるほどオンナ知らんわけやないよ？」
多少はウブな方が可愛ええねんで、なんて情報を教えてくれる。
目の前のこの人に今までのテクニックが効かないと分かった瞬間、気が抜けて。
私も彼の隣にドサッと音を立てて寝転んだ。
「ほんならなんで私に声掛けてん？」
私以外にも売りの子はいた。彼好みの “ ウブ ” な子なんてそこら辺にいただろうに。
わざわざ私に声を掛けた理由はなんだったのか。それは至極単純だった。
「顔が可愛かったから」
「ふ、(笑)」
真顔でそんなん言うから笑ってもた。
じぃ、と横から見られているのを感じて背中を向ける。
ベッドが軋む音が鳴って影が落ちてきたと思えば。
「……見してえよ、そのカワイイ顔」
落ちてきたのは、オトコの顔した名前も知らない彼だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 144人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柿の種 | 作成日時：2018年4月1日 1時
