ピエロガール (ページ5)

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一週間、二週間。

日にちが経つにつれて本当に夢だったんじゃないか。
そう思うほど何の進展も無ければ連絡もない。

一度私からも掛けてはみたけれど、かけ直されてくることはなかった。
ただの口約束。そう分かっていても「またね」を待ちたいと思う自分もいた。

『もしもし、ごめんねえ、連絡できひんくて』

結局連絡がきたのは私が不在着信を入れた日から一週間とちょっとしてから。
テレビで見る大倉くんはスポットライトに照らされて眩しかった。

『今度ご飯行かへん？いつ暇？』

「いつでも大丈夫です、大倉さんに合わせますよ」

『んーじゃあ今日』

それは急すぎる。けどまあ、大好きな大倉くんのためなら。

「分かりました、準備するのでもう少し後でも大丈夫ですか？」

『なら出来たらまた連絡してー？』

ナチュラルメイクだった化粧を濃くして、スキニーを脱いでスカートへ。
スニーカーも片付けてあの日ぶりの踵の高い靴を出した。
指の間に練り香水とスカートの裾に少しのミストで仕上げ。

“ 量産型 ” の私が出来上がったことに複雑さを覚えた。

今日が最後に直接会える日かもしれない。
それなら最後まで可愛い私でいたい。

「すみませんお待たせしました、」

通話履歴から大倉くんの名前をタップして、緊張しながら声を出す。
言われた店名と簡単な住所をメモに起こせば電話は切れた。

タクシーに乗り込んで窓の外を見つめる。
幸せそうな家族にカップル。
頭の中で私と大倉くんを並べてみたら、泣きたくなるほど釣り合ってなくて悲しかった。

「いらっしゃいませ！」

「先にいらしてると思うんですけど、」

そう言えば一番奥の個室へ案内される。
何も疑わずに来てもたけど、ほんまに大倉くんがおるんやろか。
今更になって不安になる。けれどそんなこと気にしても仕方ない。

ふう、と軽く深呼吸。
意を決して扉に手をかければそれは突然開かれた。

「う、わあ！？」

「……何してんの、Aちゃん(笑)」

ふふ、と馬鹿にしたように笑う大倉くんにドキリと胸が鳴る。
どんどん早くなる心拍数は、基準値を大きく上回りそうだ。

「お酒飲めるんやっけ？未成年ちゃうよね？」

「成人してます大丈夫です」

良かった、そう目尻を下げる大倉くんはやっぱり端正な顔立ちをしている。
緊張で飲むしかない私は、助けてもらったお礼なんて忘れてただただお酒を煽りまくった。

「強いなあ」

「そうですかね」

顔に出ないタイプで良かった。