#09 ページ10
「ごちそうさま！」
三人で仲良く手を合わせ、挨拶を済ませる。
「ほら、ふっかさん洗い物！一緒にやるで」
「りょうかい」
照は仕事がまだ色々残っているらしく、
二階の彼の部屋へと帰っていった。
「で、照兄がな？？
あぁ見えてお化け屋敷とか苦手やねん…」
康二と二人で皿洗いをしている時だった。
俺の手が滑り、布巾に包まれていた皿が
地面に落ちる。
「やばい！！」
指から紫色の光が溢れる。
怪我しないように、康二の周りに結界を張る。
俺と康二の間に空白の結界を張って、
できるだけ皿に掛かるダメージを無くして…
「え、何なん、これ…」
「…あ」
…そっか。
康二には、まだ能力の話してないっけ。
また引かれちゃったかな、
「もしかして、ふっかさんの能力？？」
「…うん、そう」
絶対引かれる、
そう思ってゆっくりと康二の顔を見た。
「めっちゃすごいやん！！！
今の一瞬で…結界やんな？これ…
凄いわぁ、結界師なんて初めて見た」
「…え？」
「まさかふっかさん…
俺がふっかさんに引くとでも思ってたん？
そんなことせぇへん！
ふっかさんが能力持ってて、誰が苦しむん？
誰も悲しまんし、苦しまん能力は
俺はとっても素敵やと思てるけどなぁ」
あ、ふっかさん能力
ごめんごめん
そう言って止めた皿を拾う康二。
だんだん、康二を見つめる視界が歪む。
頬を、生暖かい涙が伝った。
その涙は、悲しい時の左目からの涙じゃない。
「ふっかさん！！泣かんでや！！」
あたふたする康二。
そこに、たまたま下に降りてきた照が鉢合わせ。
状況がカオス過ぎて、涙が引っ込む。
「…え、どういう状況？」
照が眉をハの字にして笑う。
あぁ、もう収集つかないじゃん。
俺は傍観することしか出来ないけど。
でも、生まれてからずっと
大嫌いだった自分の能力で、
康二を守れた。
そして、康二の言葉で救われた。
___ 俺、能力持ってて良かったんだ。
「康二、照…ありがとう」
「おぉおぉ、どしたふっか」
「そんなくっついたら暑いでぇ…ふっかさぁん」
本当に、出会えてよかった、
俺の人生に光が差し込んだ。___
第 1 章 ｰ 護られなかった結界師 ｰ
Fin .
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作者名：朱黒 | 作成日時：2021年6月24日 22時
