Puissance【 sn 】 (ページ37)

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「………そっか」

ふたりとも話を最後まで止めずに聞いてくれた。

暖かい相槌も返してくれて。

「＿＿でも

佐久間は自分の気持ち、通して良いと思う」

「…え？」

「佐久間があべさんに会いたいなら、話したいなら

その気持ちを押し殺す必要は無いと思うよ？」

…だとしても。

あべちゃんの記憶の中の俺が動いてた時と

あべちゃんの能力が目覚めてしまった時は大体同時期。

俺が下手にあべちゃんと接触なんてしたら、

きっとパニックになってしまう。

「…やっぱ、ごめん、」

あべちゃんの寝顔を見てたら

なんだか離れなきゃいけないような錯覚に陥る。

部屋のドアを雑に力を押し込んで開け、

とにかく離れようと逃げるように足を進めた。

扉の向こうから、声が聞こえる。

ふっかと照の声だ。

…否、もう一つの声と二人が言い争っている…？

「…はやく、帰らせて……！！」

「大丈夫です、大丈夫です、悪い事はしませんから、」

「そんなの信じられる訳ないじゃないですか！！

……かえ(帰)して、お願い……」

……あべちゃん。

誘拐されたときの、フラッシュバック？

「落ち着いて下さい、俺の真似して」

照が落ち着いて呼吸をしているのが聞こえる。

あべちゃんの荒い呼吸も、少しずつ治まっていく。

「あの、ごめんなさい…誤解させるようなことして」

「良いんです、…僕こそ助けてもらった身なのに」

「気にしないで下さい

…あ、これ…僕の連絡先です

何か困ったことあったら、連絡して下さい」

「…いいんですか？」

「遠慮しないで下さい、…貴方の力になりたいんです」

「……」

ふっかがあべちゃんに、連絡先を渡してるのかな？

声だけだからよく分かんないや。

「…そろそろ、帰りますね

今日は本当にありがとうございました」

「いえいえ、また来てください」

あべちゃんが帰っていったことを推当し、

静かにドアを開ける。

「佐久間」

「…ごめん、全部、聞いてたんだけど、」

「…こっちこそ、ごめん…あべさん、困らせちゃって」

「それは全然良いの、俺だってきっとそうさせてた」

ふっかと照の顔が少しだけ緩む。

「さ、そろそろ寝ようか？」

「え、てか佐久間もうすぐアニメじゃないの？」

「…あぁーー！！あと2分！！やばい！！ありがと！！」

＿＿ドタバタと走って部屋へ帰った。