# 08 ページ31
「どうして俺のことそんなに思っててくれるの？
俺は皆に何かした訳じゃない、
しょっぴーにだって、それはそうで、」
「そーいう事じゃねーよ」
「え、？」
あー、佐久間なんか勘違いしてる。
佐久間は本当に優しくて、思いやりがあるヤツ。
でも…あれは謙遜しすぎ。
「佐久間に何があったか知らねぇけど、
俺は佐久間のこと良いヤツだと思ってるから。
もっと自分の事大切にしろって」
「違う、お世辞でしょ、？
俺よりも皆の方が
先に知り合って仲良くなってるのに
俺なんかが皆に受け入れて貰える訳無い…」
「あーもう！！お前鈍感すぎんだろ！！
皆歓迎してんの、
お互いに能力で苦しんでんだから
除け者とかしてる暇ねぇんだよ
…その、皆、佐久間のこと、
大切にしてぇんだよ、勿論俺もそう思ってる」
佐久間の大きくて綺麗な瞳から
涙がボロボロと溢れる。
「…しょっぴー、ぃ、…」
「ちょ、離れろ恥ずかしい」
「良いじゃん、このままで居させてよぉ…」
佐久間の身体は、
…まぁ当たり前と言えば当たり前だけれど
とても温かくて、
＿＿でもコドモみたいな無邪気さが残っていた。
溢れた涙が乾く頃。
彼は自分の過去をぽつりぽつりと話していった。
彼は自分の持っている能力が大好きだった。
折り紙で折ったチューリップを
本物の花束に変えられる自分の能力が。
寒い日には自分の首に巻いているマフラーを
暖かいアウターに変えられる自分の能力が。
しかし、彼の能力は認められなかった。
使い方を誤れば軽蔑される。
彼奴に関われば命が危うい、と。
彼は心を閉ざしていった。
自分に関係の無い他人をはね除けた。
能力によって明るい性格を保っていた彼は、
能力によって自分の殻に閉じこもってしまった。
踊ることで元に戻した筈の性格。
気付けば元通り。もう、逃げ出したかった。
彼はそんな過去を、笑って言った。
その笑いは自虐的な笑いではなかった。
心から自分の過去を受け入れた、
羽を伸ばすような笑みだった。
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作者名：朱黒 | 作成日時：2021年6月24日 22時
