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「ッすごい…!わ〜…、凄く綺麗、あ、あそこって、さっき車で通ったところですよね……?!」
「っははは、そういや通りましたねえ。」


建ち並ぶ高層ビルの窓明かりが夜の澄んだ海に落とされ、揺らめく水面が幻想的で吸い込まれそうになる。そんな都会の夜景が一面に広がり、夜空には街明かりと無数の光の粒が映されて、ただぼんやりと光っていた。その景色があまりにも綺麗で、ベンチに座るあらきさんへ背を向けたまま、興奮冷めやらぬ様子で問いかければ、楽しそうに、はたまた嬉しそうに笑いながら返される。

すると、いつの間にか席を立ったらしいあらきさんが背後からゆったりと現れ、そのまま私の左隣へ並ぶ。そして私と同じように、彼もまた欄干へ手をかければ、その男らしい手にはめられたリングが鉄作りのそれとぶつかって、カチャリと音を立てた。

その無機質で小さな音がやけに耳に入り、先程から感嘆を漏らしていた己の口が自然と閉じていく。それは間違いなく、私の隣に立つ男の影響で、人一人分もないであろう距離の近さに、わかりやすく動揺してしまっていたからに違いなかった。─…そんなこと、彼は気にしていないだろうけど。



「……今日はありがとうございます、急に誘ったのに。」
「こちらこそ……!むしろ、誘ってくれてありがとうございます。こんな綺麗な景色もみれて、幸せです。」



夜景を目に収めたまま、ポツポツと独り言のように口にすれば、隣からは、ふふ、と鼻にかけた笑い声と、「喜んで貰えてよかったっすわ」という嬉しそうな声が聞こえてきた。そんな彼の声にこちらも笑みが零れ、だがそれ以上何か言葉を返す訳でもなく、夜風を体に感じながら都会の煌びやかな光を見渡す。

あと数日で年明けを迎えるという今、こんな時期の夜風はなかなかに寒いはずだが、羽織る暖かなコートの他に、心の内から何か温まるものがあり、寒さなんてものは全く気にならなかった。それより、二人で同じ夜景を眺めているこの静かな時間が、何だかむず痒く感じて、やはりこちらからなにか話しかけようかと迷うほどだ。

だが、それも何となく気が引けてしまって、出しかけた声を飲み込んだ─…その時、丁度このタイミングで、隣に並ぶ彼が言葉を零したのだ。それには普段あまり聞くことの無いニュアンスが含まれていて、私にしか聞こえない程度の声量でぽつりと、それでいてはっきりと吐き出されたものだった。



「……俺って、Aさんからどう見えてますか。」

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こんぺい - 最推しの小説を探しててやっと見つけることが出来ました!!!出会えたこの作品と作者様に感謝です、、、、 (2021年11月23日 23時) (レス) id: 08c835e323 (このIDを非表示/違反報告)
美波(プロフ) - 本当に好きです!この作品!! (2021年8月30日 4時) (レス) id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら - 続く、、続く、、更新めっちゃ頑張ってください、、(なんかプレッシャーになってたらすいません) (2021年6月27日 4時) (レス) id: f269c77d86 (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - なぜ今まで読んでいなかったんだ…… めちゃくちゃ面白くて続きが気になります! (2021年6月21日 18時) (レス) id: 7947c0ed70 (このIDを非表示/違反報告)
- あらなるがかわいすぎる...更新頑張ってください!!! (2018年8月24日 13時) (レス) id: d379028483 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑞乃。 | 作成日時:2017年11月10日 22時

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