story 45 ページ45
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落ち着かないとはいえ、彼からのその言葉が嬉しかったということには変わりない。そして“どっか行きますか”という誘いについても、断る気はさらさらなかった。そして、後は私自身が出かけたいという意志を伝えるのみ。少し不自然な沈黙を挟んでしまったが、気にせずいこうと口を開いた……の、だが。すう、と息を吸い込む私を遮るように、ここでまた目の前の男はその唇を動かしてゆったりと話し出したのだ。
「……まあ、つっても俺が出かけたかっただけなんすけどね。」
「……へ、」
「2人で、ね。」
先に発言権を奪われ、吸い込んだ息の吐き場を見失ったのと同時に思いもよらぬ言葉が耳へ届き、情けない声が漏れる。反射のままに視線を彼へ向ければ、珍しく彼の目は私へ向けられておらず、手に持っていたグラスへ落とされていた。そのままボソリと続けて吐き捨てられた言葉はまるで独り言のようで、それでいてしっかりと私へ向けられているような、そんな声色だった。
なんと返したら良いのか分からずに固まる私を他所に、飄々と手に持っていたグラスを口元へ持っていくあらきさん。そのまま口を付けたかと思えば、このタイミングでグラスへ向けられていた視線が私の方へちらりと流される。不意をつかれてバッチリと合わさった瞳に動揺していると、グラスの隙間から見える彼の口角が楽しげに歪んでいった。
その色気のある表情に慌てて目を逸らすと前方からは、ふふ、と微笑が揺らめく音がして、それにまた深く動揺するのだった。
「………んで、どうしますか。」
未だ返事のない私に痺れを切らしたのか、答えやすいようにパスが出される。そのパスを有難く受け取り「私も出かけたいです」と意を決して口にすると、何故だか途端に恥ずかしくなってしまい、それを隠すようにグラスを手に取り口元へ持っていく。もうそんなに残っていない水分をちびちびと流し込みながらあらきさんへ目を向ければ、目の前の彼は嬉しそうに目を細めて微笑んでいた。
「じゃあちょっと待っててください、準備してくるんで。」
「ッは、はい……！」
そしてスッと席を経ち、リビングから姿を消した彼を待つこと数分。緩くセットされた髪やその他諸々、少し雰囲気が変わった状態で再び現れ、そんなこんなで私たちは揃って玄関をでた。車では当たり前かのように助手席へ座らせられ、以前乗った時とは全く違う心境で発進を迎える。
──そしてここで、先程の冒頭に戻るのである。
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こんぺい - 最推しの小説を探しててやっと見つけることが出来ました！！！出会えたこの作品と作者様に感謝です、、、、 (2021年11月23日 23時) (
レス) id: 08c835e323 (このIDを非表示/違反報告)
美波(プロフ) - 本当に好きです！この作品！！ (2021年8月30日 4時) (レス) id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら - 続く、、続く、、更新めっちゃ頑張ってください、、（なんかプレッシャーになってたらすいません） (2021年6月27日 4時) (レス) id: f269c77d86 (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - なぜ今まで読んでいなかったんだ…… めちゃくちゃ面白くて続きが気になります！ (2021年6月21日 18時) (レス) id: 7947c0ed70 (このIDを非表示/違反報告)
涼 - あらなるがかわいすぎる...更新頑張ってください!!! (2018年8月24日 13時) (レス) id: d379028483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑞乃。 | 作成日時：2017年11月10日 22時
