story 44 ページ44
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左を向けば深い藍色に染まった空とカーウィンドウ、右を向けば両手をハンドルに添えて前方を見据える彼の姿。現在、所謂助手席という場に腰を下ろしている私は、この状況にほんのりとデジャヴを感じていた。だが1か月前のように家まで送って貰っているという訳ではなく、それとは全く違う背景がある。
そう、それは今から20分ほど前。「どっか行きますか」というあらきさんの言葉が事の発端だった。17時頃に集まり、早々とご馳走を振る舞って頂いた訳だが、2人で料理に手をつけながら駄弁っていたあの時間は、あっという間に時計の針を進ませた。2時間も経てば皿へ盛られた料理もなくなり、それからは1台のテーブルを挟んだまま他愛もない話を繰り広げる。……そんな時だったのだ。
たまたま2人同時にグラスへ口をつけ、なるべくして訪れた沈黙。その何気ない沈黙の後、仕切り直すかのように彼の方から切り出された、という訳である。
「どー…っか行きますか、もう7時過ぎたし。」
「え、どこかって、出かけるんですか？」
「え？いやまあ別にこのままでもいいんすけどー…」
そこまで賑やかに駄弁っていたという訳では無いかもしれないが、少なくとも私はこのゆったりとした空気感が心地良かった。何となくあらきさんの方もリラックスしてくれているのだろうな、と勝手に思ってしまっていたが、この空気を断ち切るようないきなりの切り出しに少し驚いた。
── 約2時間もご一緒できた事だし、そろそろお暇するべきだろうか。確かに元はと言えば、一緒に夕飯でも、というお誘いから決まったものだ。それが済んだ今、優しい彼のことだから帰れと言いづらいのかもしれない。何となく落ち着きのない彼の姿と、歯切れの悪い話し方からそう解釈した私はゆっくりと言葉を紡いだ。
「すみません。長居しすぎも迷惑でしょうし、今日はそろそろ……」
「いやいや、そうじゃなくて。」
「え？」
「せっかくお洒落してきてくれたのに、もったいないじゃないすか。」
え、と本日何度目かの声が漏れた。確かに今日は気合いを入れて準備をしたが、それは彼からの甘い言葉を期待した為ではなく、単なる自己満で行ったものだ。それがまさか、彼の方からその部分を言及されるとは。
そこまで見てくれていたのかという嬉しさもあれば、やはり気合い入れすぎたかと恥ずかしくも思う。それと同時に、何だか彼の目によって全身を見定められているかのように感じてしまって、落ち着かなかった。
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こんぺい - 最推しの小説を探しててやっと見つけることが出来ました！！！出会えたこの作品と作者様に感謝です、、、、 (2021年11月23日 23時) (
レス) id: 08c835e323 (このIDを非表示/違反報告)
美波(プロフ) - 本当に好きです！この作品！！ (2021年8月30日 4時) (レス) id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら - 続く、、続く、、更新めっちゃ頑張ってください、、（なんかプレッシャーになってたらすいません） (2021年6月27日 4時) (レス) id: f269c77d86 (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - なぜ今まで読んでいなかったんだ…… めちゃくちゃ面白くて続きが気になります！ (2021年6月21日 18時) (レス) id: 7947c0ed70 (このIDを非表示/違反報告)
涼 - あらなるがかわいすぎる...更新頑張ってください!!! (2018年8月24日 13時) (レス) id: d379028483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑞乃。 | 作成日時：2017年11月10日 22時
