story 39 ページ39
·
そんなこんなで幾つか言葉を交わしていくうちに、いつの間にか和やかな雰囲気へと変わる。時折ラガマフィンの愛猫を呼び寄せたかと思えば、持ち上げて画角へ映り込ませるあらきさん。その可愛らしい1匹と1人へ形容し難い感情を募らせたまま雑談を続けていると、画面内の男は「あ、そうそう」と思い出したように切り出したのだ。
『明日の夜…てか夕方頃、空いてますか？』
「明日、ですか？」
『はあい、もし良ければ
「ッえ？！」
まさかの招待に、思わず大きな声が漏れてしまった。そんな私を見て画面内の彼は笑っているが、これは中々凄いお誘いではないか。因みに、このように誘ってくれたのは2度目だ。あろう事か1度目こそ仕事を理由に断ってしまったが、今日は土曜日…つまり明日は日曜日。この勝負、完全週休二日制の職場に就いた私の勝ちである。
ぜひお邪魔したいです、と興奮冷めやらぬ様子で伝えれば、「ほんとっすか、よかったー」とこれまた楽しげな声で返された。夕飯となると、また手料理を頂けるということだろうか。そうでなくとも勿論構わないが、とにかく明日が楽しみで仕方がない。気を抜かずとも緩みきってしまった頬のまま、続く彼の言葉を待った。
『んじゃあ、明日の午後…5時くらいに出れるようにしといてください、迎えいくんで。』
「そんな、自分の車で行きます…！」
『いやいーっすよ、うち駐車場空いてないし。』
「ッじゃあタクシーで行きます！」
『……でも、お金かかるっすよ。』
「ッいえ、寧ろこのくらい出費させて下さい……あ、でも住所、」
『まあ、それは全然教えますけどー…、っはは、じゃあ、5時過ぎくらいに家来て貰う感じでいいすか？』
意地でも譲らない、と圧をかけて見つめる私に観念したのか、タクシーで向かう権利を得る事に成功した。画面内の男は私の喜びようを見て笑っているが、ひとまず安心。前回のトラウマが残っているものだから、また車まで出されてしまったら今度こそ罪悪感で潰れてしまうところだった。とはいえ、今更ながらやはり気になるところも。
「……自分から言っておいてなんですが、本当に住所まで聞いてしまって良いんですか？」
『ああ、全然いっすよ、Aさんだし。』
勢いに任せてしまったとはいえ、住所の提示なんて渋っても可笑しくない。それでも彼は、緩く微笑んで快く返してくれた。それが純粋に嬉しくて、単純な私はまた頬を緩ませるのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 612人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こんぺい - 最推しの小説を探しててやっと見つけることが出来ました！！！出会えたこの作品と作者様に感謝です、、、、 (2021年11月23日 23時) (
レス) id: 08c835e323 (このIDを非表示/違反報告)
美波(プロフ) - 本当に好きです！この作品！！ (2021年8月30日 4時) (レス) id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら - 続く、、続く、、更新めっちゃ頑張ってください、、（なんかプレッシャーになってたらすいません） (2021年6月27日 4時) (レス) id: f269c77d86 (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - なぜ今まで読んでいなかったんだ…… めちゃくちゃ面白くて続きが気になります！ (2021年6月21日 18時) (レス) id: 7947c0ed70 (このIDを非表示/違反報告)
涼 - あらなるがかわいすぎる...更新頑張ってください!!! (2018年8月24日 13時) (レス) id: d379028483 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑞乃。 | 作成日時：2017年11月10日 22時
