story 34 ページ34
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走り出して数分、といったところだろうか。依然として車内は静けさに包まれているが、気まずさは感じない。心地いいといえばそうなのかもしれないが、如何せん自分の心の音がうるさい事が気掛かりだった。
─…こんな夜遅くに車を走らせてしまって、申し訳なさすぎる。隣でハンドルに手を掛けている男は、今どんな顔をしているのだろう。気になるもそちらへ視線を向ける勇気のでない私は、前を見据えることしかできない。対向車線を走る車が眩しかった。
「……そんな、申し訳なさそうな顔しないでください」
「……え、」
やけに落ち着いた声色と突然の言葉に思わず声が漏れ、反射的に右隣へ首を回す。ハンドルに手を掛け、真剣な眼差しで前を見据える横顔が視界に映った。するとこちらの視線に気づいたのか、顔は動かさずに瞳だけがこちらへ流される。一瞬だけ交わったその瞳は、何だか全てを見透かしているような、そんな雰囲気を帯びていた。
「……いや、申し訳ないです。わざわざこんな夜遅くに、」
「いやいや、元々1人で帰らすつもりなかったっすから。」
ここで、彼が最後までノンアル缶を飲んでいた意味をやっと理解した。見る限り、荷物は最低限度しか持たれていない。私を送った後、またなるせの家へ戻るのだろう。
─…お酒まで我慢させてしまったのか。そんな事を考えていると、前を見据えていた筈の視線は分かりやすく落ちていく。そのまま少しの沈黙が過ぎると、隣に座る男の口から自分の名が呼ばれた。推しに呼ばれたのにも関わらず、私は黙って顔を向けることでしか返事ができなかった。
「……もう他人じゃないっすよね、俺達。」
ポツリ、と控えめに吐き出されたその言葉。へ、と思わず間抜けな声が漏れてしまった。対向車のライトに照らされる横顔を見つめたまま、時が止まったかのように動けない。だがそんな中で、「まあそれだけなんすけど」とこちらの気も知らずに呟くこの男。流石の私も、このまま黙っていられる訳がなかった。
「ッいや、あの私、貴方のこと推してます……！」
「ん？そんなの知ってますよ。」
「……な、」
知ってるのなら尚更の話。リスナーと活動者の関係なのだ、私達は。踏み越えてはいけない、どうしようもない程に分厚い壁が、私達の間にはあるのだ。
─…どうしよう。どうしたら。
ぐるぐると頭が回る。バクバクと早まる心臓と困惑でどうにかなってしまいそうだったその時、彼はゆっくりと口を開いた。
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こんぺい - 最推しの小説を探しててやっと見つけることが出来ました！！！出会えたこの作品と作者様に感謝です、、、、 (2021年11月23日 23時) (
レス) id: 08c835e323 (このIDを非表示/違反報告)
美波(プロフ) - 本当に好きです！この作品！！ (2021年8月30日 4時) (レス) id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら - 続く、、続く、、更新めっちゃ頑張ってください、、（なんかプレッシャーになってたらすいません） (2021年6月27日 4時) (レス) id: f269c77d86 (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - なぜ今まで読んでいなかったんだ…… めちゃくちゃ面白くて続きが気になります！ (2021年6月21日 18時) (レス) id: 7947c0ed70 (このIDを非表示/違反報告)
涼 - あらなるがかわいすぎる...更新頑張ってください!!! (2018年8月24日 13時) (レス) id: d379028483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑞乃。 | 作成日時：2017年11月10日 22時
