story 16 ページ16
·
ガサリ、とケータリングへ手を伸ばし、比較的好きなチョコレートを手に取る。
「あーそれ、おいしいっすよねえ」
「ですよね〜、チョコ、好きなんです」
そう言って包みの端を破れば、俺も何か食べよ、と呟き彼もまたケータリングへ手を伸ばした。あらきさんがお菓子を手に取ったと同時に、私はチョコを口に放り込む。ミルクが多めで、甘くて美味しい。そうして呑気にチョコの味を楽しんでいると、またもやあらきさんから口を開き、その形のいい唇を動かした。
「そういえば、Aさんってアルバム聴いてくれたりしました？」
「………え？」
「あ、まだでした？」
「いや、違くて、」
「……？」
「っな、名前……！」
ナチュラルすぎて聞き流すところだったが、私の耳は誤魔化せない。聞き間違いかと思ったが良かった、そうではなかったみたいだ。……まあおかげで、2つ目のチョコレートを落としてしまったが。
「ああ、なるせが呼んでたの聞いてたんで、勝手に呼んじゃってました。」
「あ、あ〜…！成程、びっくりしちゃいました。」
「いやーすいません、馴れ馴れしくて。」
「ッとんでもない！むしろ嬉しいです！」
緩い謝罪へ対して食い気味に返す私に、ケラケラと笑うあらきさん。ありがとう、なるせ。君のおかげで、思わぬサプライズを貰ってしまったよ。そう心の中で感謝しつつ、その喜びを噛み締めた。
「アルバム、勿論聴きました。というか、毎日聴いてます…！」
「毎日！そーれは嬉しいっすねー…」
「本当にもう、全曲お気に入りです。あらきさんとなるせの相性といい、最強でした！」
「嬉しい〜、いい感じっすよねー、今回。」
「はい…！それに今回が初めてのライブなので、もうめちゃくちゃ楽しみで！……ってすみません、うるさくないですか？」
本人を前に熱く語ってしまった自分に、少しの恥ずかしさを感じる。それと同時に、あらきさんの前だと言うのにも関わらず、これだけ喋れるようになってきているということに嬉しくも思った。
「全然うるさくないっすよ〜。まあでもライブは別として、もうなるせとは会ってるじゃないすか。」
「……実は、歌い手のnqrseと認識したのはつい最近なんです」
「え？！今まで知らなかったんすか？」
「はい、知らずになるせの目の前で推し語りしちゃってました……」
気付かぬうちに盛り上がっていく話。聞き上手なあらきさんに乗せられてペラペラと喋り続ける私を、あらきさんはにこやかに見つめていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 612人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こんぺい - 最推しの小説を探しててやっと見つけることが出来ました！！！出会えたこの作品と作者様に感謝です、、、、 (2021年11月23日 23時) (
レス) id: 08c835e323 (このIDを非表示/違反報告)
美波(プロフ) - 本当に好きです！この作品！！ (2021年8月30日 4時) (レス) id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら - 続く、、続く、、更新めっちゃ頑張ってください、、（なんかプレッシャーになってたらすいません） (2021年6月27日 4時) (レス) id: f269c77d86 (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - なぜ今まで読んでいなかったんだ…… めちゃくちゃ面白くて続きが気になります！ (2021年6月21日 18時) (レス) id: 7947c0ed70 (このIDを非表示/違反報告)
涼 - あらなるがかわいすぎる...更新頑張ってください!!! (2018年8月24日 13時) (レス) id: d379028483 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑞乃。 | 作成日時：2017年11月10日 22時
