【Si】片恋綴りの弱虫ノート ページ7
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“好き”
たったその二文字のことなのに……。
“おはよう”
その四文字より短い言葉さえ今日も言えず終い。
幼なじみは……
誰よりも近くて……
誰よりも遠い……
【片恋綴りの弱虫ノート】
「おいっ、Aほんまに置いてくからなー」
「ちょっと待ってってー!
今行くから!」
「ったく」
とある一軒家の二階に向かって朝から声を張り上げる。
これはもう十年近く繰り返されている朝の風景である。
「ふぅ!
危ない危ない、もうちょっとで遅れるとこでしたっ」
「完全に遅れてるわ」
「ごめんちゃいっ」
「気持ち悪」
「ちょっとぉぉ!」
オレらは世間が言うとこの幼なじみ。
小学校に上がる少し前にオレはこの街へ引っ越してきた。
そこで近所やった目の前の女子力の欠片も無いような幼なじみのAと仲よくなり。
そして高校一年になった今ではもう半分家族のような存在になりつつあった。
そんな今日は終業式。
明日から長い長い夏休みが始まる。
「何回も言うてるけどさ、せめて寝癖ぐらいは直してきたら?」
「え、だって志麻ちゃんがいつも直してくれるからいいかなって」
「直す直さんやなくてその時間ぐらい作れってことや……。
そんなんやから彼氏いつまでも出来ひんねやで?」
「彼女いない志麻ちゃんに言われたくありませーんっ。
あたしはありのままを受け入れてくれる人がいればそれでいいのっ!」
「もうそれ野生のゴリラぐらいにしか嫁げへん……」
「もうほんっとに失礼ー!」
「いった!
ちょ、A 力加減考えろやーっ」
馬鹿力でガサツで声もでかいし。
そんな幼なじみだけれどこうして世話を焼けるのは。
Aが誰よりも人のことを考えれて優しくて人としてオレなんかよりずっと出来た人やから。
オレもそんなAの人間味に助けられたことばっかりやった。
だからどうしてもほっとけへんくて、毎朝叩き起こして学校に連れていく。
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作者名:モコ | 作成日時:2017年6月24日 23時