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side─S─
“あたし達……別れよっか”
オレらの二年続いた関係はある冬、そんな簡単な言葉で終わりを告げた。
「……なんで……なんやろ……」
今どこを歩いているかなんてこともあやふやなまま。
どうしてAが別れを切り出したのかずっと考えていた。
何か……Aの地雷を踏んでしまった……?
自分も自分なりにAを大切にしてきたつもりで。
でもやっぱりそれは自己満足にしかなっていなかったのか……。
「……って今さら考えてもねぇ……」
理由は分からないまま。
話も出来ないまま。
別れは突然やってきた……。
「おー、センラくんみーっけ!」
「あ、Aやん」
「やっぱりここだったか〜」
同じ高校で出会ったことをキッカケにAのことを好きになった。
一目惚れってやつかな?
猛アタックの甲斐もあって夏休み、Aからのオーケーの返事を貰えた。
その頃はよく、中庭でAと会っていた。
屋上は閉鎖されてて行けず、日当たりの良い中庭にオレは拠点を置いていた。
「はいっ、購買のアイス食べる?」
「食べる食べるー」
「チョコとバニラ、どっちがいい?」
「んー、バニラにしよーかな」
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
Aはチョコのアイスが好きやったから……
オレはいつもチョコ以外の味を貰って、でも結局Aのも食べたくて一口貰ったり。
ふと忘れてしまいそうな思い出も気付けば記憶の真ん中に居座るのだ。
お互いバイトがあったし、何やかんやで会えるのは学校が主やった。
頻繁に出掛けられへんくてもAは文句一つ言わずにオレを気遣ってくれた。
その優しさに……甘え過ぎてたのかも……。
「……ねぇ、センラくん……」
「どうしたん?」
「センラくんが就職して県外に行っちゃっても……あたしまだ……
センラくんの彼女でいてもいいかな……」
寂しさと不安が混じる声と表情に愛されていると実感し、また愛しくなるAを抱き寄せた。
「そんなこと当たり前。
オレもずっと……離れてもAに支えてほしい」
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作者名:モコ | 作成日時:2017年6月24日 23時