【Se】サヨナラの彼方で ページ21
“君のため”
そんな言葉で納得できるほど、あたしはまだ大人じゃなかった。
“置いていくのは辛いけど自分のやりたいこともやりたいし?”
それでもそう言った彼の負担になりたくなかったことも本心だ。
だからあたしは……覚悟を決めて彼に告げたんだ。
“センラくん……。
あたし達…──────────”
【サヨナラの彼方で】
「……え?
A……何の冗談で……」
「だから。
あたし達……別れよっか」
「なんでそうなるん……!?」
この季節での屋外は寒いの一言に尽きるもので。
空は分厚い雲をまとってすっかり灰色模様。
もう少しすれば雪が降ってきそうな天候だった。
そんな中、悴む口元から絞り出す声を震わせまいと見栄を張る。
淡々と告げるあたしに先ほどまで彼氏であったセンラくんはすがるようにあたしの顔を覗き込んだ。
その動作にフワリと優しいセンラくんの香りに包まれ。
いつもいつもあたしを包んでくれたその香りも……
その腕も……もう、あたしのものじゃない。
「あたしね……センラくんの重荷になりたくないの……」
「重荷って……っ。
オレはAのこと重荷に思ったことなんてないよ?」
高校一年の夏から付き合い始め、二年続いたこの関係もこの冬に終わりを告げた。
それはふとした時に聞いてしまったセンラくんの一言からだった。
“「置いていくのは辛いけど、自分のやりたいこともやりたい」”
センラくんとは違うクラスで一緒に帰ろうと声を掛けに行った時、センラくんが友人にそう話していたのを聞いてしまった。
センラくんは進路を県外への就職に決めていて、仕事でも採用が正式に決定した。
あたしの進路は県内の大学に進学。
つまりは遠距離恋愛になるわけだ。
「あたしは……っ!
センラくんに無理してほしくない……」
お互いにそれは覚悟の上で付き合っていこうと話をしていたけれど……。
そんなことを言われてしまえばあたしは負担になっているということで。
だからあたしと別れれば地元への未練も無くなって春から始まる新しい仕事にも集中出来る。
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作者名:モコ | 作成日時:2017年6月24日 23時