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「……そうなん?
無意識やから分からんけど……」
「あたしがそうだから分かるのかも……っ?
あたしも今……すごく寂しいよ」
「……A……」
「それでもいつまでも後ろを向いててもダメなんだよね……。
変えられないことも人生でたくさんある……。
でもね、志麻ちゃん……」
「……ん……?」
「こっち……向いて?」
「な……」
なに?と言いながら顔を上げれば、Aの顔がすぐ近くに感じて。
次いでほんの一瞬、唇に触れた柔らかく甘い感触。
ほんまにそれは一瞬のことでいくらかしてからあれはキスやったのかと理解したほどで。
「向こうで高校卒業したら……ここに戻ってくる。
前から大学はこっちで通いたい所があったし……
何より志麻ちゃんがいる」
街灯のオレンジの薄明かりが赤くなっているらしいAの顔を染め変えてしまうけれど。
「だからね……それまで少し待っていてほしい」
「……もちろん当たり前や。
オレはいつまでもここで……Aの帰りを待ってるから。
なんかあったらすぐに言うてや?
なんでも話聞くから、な?」
「志麻ちゃんんん……っ」
オレの精一杯のお別れの言葉にうるうると涙を溜めたA。
昔ならこれですぐ泣いてたけど……
もうあの頃とは違う。
優しくて強くなったAがここにおる。
涙を拭って、うんうんと頷いた。
「あたし……何があっても頑張るね……っ!
志麻ちゃんとまた……会える日まで」
「オレも……頑張るから」
これから先、すぐ隣におらんくても……
心の距離は前よりもきっと、ずっと……
誰よりも近付いたから。
オレはここでAが戻ってこられる場所を守っていよう。
“何をしてもダメだ”
“でも結局はオレなんて”
“どうせオレには”
そんなネガティブなばっかりやった言葉から……
“Aのことが好き”
“強くありたい”
“前を向いていよう”
そんな言葉に埋まっていく。
弱虫な片恋綴りばかりだったノートが…────────
【END】
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作者名:モコ | 作成日時:2017年6月24日 23時