. ページ2
「高校三年生にもなると受験勉強とかもあるしねー」
「そうそう……！！
そう言えば、うらたんはどこの大学通ってるの？」
「それは内緒であります」
「えぇー、そろそろ教えてくれてもー！」
着ぐるみを着て交わす会話なのかと少々疑問に思うが……。
オレには着ぐるみを脱いで人と対話することが出来ない。
完全に出来ない……という訳ではないのだが……。
過去にちょっと訳があって……。
例えば着ぐるみのように何かのガードがなくては話が出来ないのだ。
それは目の前の彼女、Aちゃんに対してもそうで……。
「まぁそのうち、ね？」
「その言葉、前から聞いてるけどー！」
お陰様で大学でも友達の輪が中々広がってくれず……。
でも、このバイトの時だけは別なのだ。
本当のオレを知らないから……
シナリオ通り上手になりきれるから……
気負わずに話せるのかも……。
でも、このままという訳にはいかないだろう……。
と、分かっていても行動にまで移せないのが現状だ……。
「Aちゃんってばそんなにオレのこと気になるのー？」
「勿論だよっ！
うらたんの好きな食べ物とかー、どんな時にテンション上がるのかとか！
音楽はどんなジャンルが好きなのかなーとか？」
そんな本心を隠すようにしてからかうように問えば存外、Aちゃんは素直に例を挙げてくれた。
「それも……」
「秘密であります、と？」
「ご名答っ」
「えぇー。
うらたんって意外と秘密主義なのねー」
Aちゃんはオレが濁せばそれ以上踏み込んでくることはなかった。
オレは何となく自分のことを教えるのが気恥ずかしくて。
あと好きな食べ物って瞬時に一つに絞れない。
今度、聞かれた時のために考えておこう。
内心そんな長い呟きを残し、友人に呼ばれたAちゃんは、じゃあねと手を振って駆けていく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 27人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：モコ | 作成日時：2017年6月24日 23時
