�� ページ21
紫side
肩に触れる冷えた空気で目が覚める。
「んﾞっ、…うー、…さむ…」
隣にあるはずの温もりを求めて、目を閉じたまま布団の中をごそごそ探すけど、手に触れるのは熱を持たないシーツだけ。
「…のぞむ？」
無理やり目を開くとそこに居るはずの望の姿が見当たらない。
のそのそと身体を起こすと、裸のままの身体に冷気が襲ってくる。
「ううっ、さむっ！」
ベッドの下に落ちているパジャマを拾うと、
桃「あれ、起きた？」
窓辺から声が聞こえる。
外はまだ暗い。
全ての照明を消して寝る俺達の部屋は薄暗く、窓から入る弱い光で望を確認する。
紫「どした、そんなとこおって」
寒がりのくせジャマを羽織っているだけの望が、窓辺に立っていた。
ブランケットをまるまった肩に掛けてやり、そのブランケットごと後ろから抱きしめる。
桃「んふ、あったか」
そう言うと、俺の腕をぎゅっと握って嬉しそうに笑う。
桃「見て、また雪降ってる」
今シーズンは東京でも雪がよく降る。
車通りも少ない深夜。
窓の外には静かな白い世界が広がっていた。
紫「ほんまや。この調子ならまた積もりそうやなぁ」
2人でぼんやりとその景色を眺める。
桃「な。2年くらい前にさ、照史と淳太の仲が良い俳優さんが亡くなったやん」
ああ、
望が初めてリアルな死に直面した日。
もうそんな前になるのか。
桃「あの日の夢を見てん」
「そっか」
桃「うん」
望の身体を包み込むようにぎゅうっと抱き締め直す。
桃「今も、怖い。大事な人たちが居なくなるなんて考えられへん。だけど、…永遠なんてないのは、分かってる」
あの日とは違って、静かに、穏やかに話す望。
桃「…なんて言うてても、そんな日が来たらめちゃめちゃ絶望するんやろうけどさ。でも、なんやろ、なんか…、『その日』は今この瞬間にでも起こりうる事なんや、って」
「せやな…」
身体を捩って向き合うと、腰に腕を回して肩にもたれ掛かってくる。
桃「いまこうして居られるのが奇跡なんやって、そう思う。だから、後悔のないように全部を大事にしたい。周りにいるみんなの事も、自分の事も」
望の手がパジャマをぎゅっと握る。
桃「なぁ、濱ちゃん」
「ん？」
桃「大好き」
「ふふっ、うん、ありがと。俺も大好きやで」
へへ、と嬉しそうに笑う声が耳元で聞こえた。
→
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紫茉莉花(プロフ) - nonkiさん» 生命の事を描写する事に少し不安もあったけど、いつか書いてみたいと思っていた作品です。年を重ねてお互いの持つ愛情の深まりも感じられたら良いなって思いました。情景を感じとって貰えて凄く嬉しいです🥲 (1月20日 4時) (
レス) @page22 id: 3783008df2 (このIDを非表示/違反報告)
nonki(プロフ) - 雪の日に君を想う、すごく好きです。静かなお話だけど紫桃の相手を想う熱は燃えてて…ほんとにシチュエーション描写が良くて映画みたいに頭の中に広がっていきます💜💗特にラストの締め方（紫桃のベッドシーンの一コマ）最高すぎる！ (1月19日 23時) (レス) @page22 id: 5cdd676e12 (このIDを非表示/違反報告)
むらさきジャス民(プロフ) - ne_iroさん» 泣かせちゃってごめんなさい😭でも、それ程感情移入して貰えたのがすごく嬉しいです😭一日千秋という題材でずっと書いてみたかった作品でした。ne_iroさんのコメほんといつも優しくて励みになります！ありがとうございました(*´∀`*) (2022年8月6日 8時) (レス) @page50 id: ac88e2bdd3 (このIDを非表示/違反報告)
ne_iro(プロフ) - ダメだぁ…ボロボロ泣いちゃいました… こういう系の話苦手だったのに、主さんのお話だと柔らかくて構えずに読めました。こっちのシリーズのお話達も大好きです！！ (2022年8月6日 2時) (レス) @page50 id: 1e987a1157 (このIDを非表示/違反報告)
むらさきジャス民(プロフ) - ne_iroさん» 紙袋をぎゅっとしてる時、キラキラおめめを想像して貰えると嬉しいです💚笑 こちらのお話がかなり久しぶりになってしまってたので、ちょこちょこ載せていきたいなって思ってます😁 (2022年7月20日 13時) (レス) id: ac88e2bdd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：JWpurple
| 作成日時：2022年1月3日 10時
