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「どうして私が……」
「杏寿郎さんに見たいって言われたから、お願い」
隠れていた妹を引き摺り出してきて、庭で薙刀を構える。
藤花家は刀でなく薙刀の心得があると聞く。是非拝見したい、と言われたら断ることはできない。

「……あの人、目こわくない? 」
「こら、そんな失礼なこと言わないの」
Aに比べると随分と緩やかな教育を受けた妹はそんなことを口にする。
とはいえ、この道はかなり難儀だから、妹に違う可能性を残せただけ良いだろう。

「はじめ! 」
母の声にAは構えを取った。

.

杏寿郎は許嫁の女性が薙刀を構えるのを見ていた。
妹の方も全集中の呼吸が使えるらしい。が、Aの練度は並大抵のものではない。
刀の適性がないとは、本当なのだろうか?

二人は互いの間合いを図って、薙刀を打ち合う。
どちらも悪くない。妹も鬼になったばかりのものと渡り合うくらいはできるだろう。
が、姉はそれを超えていた。彼女は、鬼の首を取るかもしれない。

刀の鋒のように張り詰めた気配。
相手の動きを、心臓の拍動さえ見逃すまいというような目線。

杏寿郎はやや前傾姿勢になって二人の薙刀を見た。
Aは正義感や使命感の強い女性だ。芯がある。

彼女を鍛えたらどうなるだろう? そう思うと同時に、凛とした彼女の美しさに目を奪われてもいた。
……もしも、彼女と家庭を築けたなら。

そんな空想などをしながら、杏寿郎は真剣な目を向けた。

.

「やめ! 」
声に組み合いをやめる。
二人は礼をして、妹は……そそくさと逃げていった。
仕方のない子、とため息をついて、Aは杏寿郎の元へ向かう。

「薙刀はおなごの武器ですから、面白みがないでしょう」
「A、俺の弟子にならないか! 」
「……どこ見てるんてすか? 」
また何か言い始めた。

「俺の弟子にならないか! 」
「なりませんよ。どうなさったんですか? 」
「……そうか、ならないのか」
杏寿郎は肩と眉を落とす。結構本気だったらしい。
「医師ですので……ほら、そろそろお戻りにならないと」
Aはほら、と杏寿郎の背中を押して歩いていく。
大きな背中だ。沢山の人を守る大きな背中。

「そうか、もう戻らねばならないか」
玄関先で杏寿郎が振り向く。
「次に会う時は良い知らせができそうだ」
「左様でございますか、それは、楽しみにしております」
杏寿郎の嬉しそうな笑みに、つられてAも微笑んだ。

漆→←伍



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 煉獄さん   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:あくびさん | 作成日時:2021年2月13日 10時

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