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二宮「みつけた・・・この家だ」
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千切れそうな手足を引きずって歩くカズナリは、ともすればゴミの様にも見えました。
それでも、ようやく大野に託された手紙を渡す相手――――櫻井 翔の家につきました。
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＠「うわ・・・きったね！」
＋「なんだありゃ！」
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櫻井は運転手や使用人がそう言うのを聞いて、ふと、そちらを見やりました。
それは黒い、ボロ雑巾のようになった猫でした。
いえ、猫のような、かろうじて生きている生き物でした。
猫だとわかったのは、「にゃあ」と鳴いたからです。
分刻みで仕事をする櫻井は、普通なら気にも留めません。
でも、細いその声が櫻井がずっと帰りを待ちわびている男の声に似ていたので、櫻井は注視しました。
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櫻井(なんだ・・・？)
櫻井(なんか、もってる・・・？)
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「櫻井さま！」「汚いですよ！」という声は、聞こえませんでした。
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二宮「アンタが・・、櫻井 翔？」
櫻井「・・・ああ」
二宮「・・・・・よかった、アンタに、これ・・・」
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そういうと、カズナリもまた動かなくなりました。
でも、とてもとても幸せそうな顔をしていました。
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櫻井「なんなんだ、一体・・・」
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でも、櫻井はカズナリが届けてくれた手紙を見ると、すべてを悟りました。
達筆で「智」と描かれたその文字以外は、ずっと咥えたいた為に汗と涎と涙で中は滲んで読めるものではありませんでした。
それでも、手紙を託された意味を、送り主を、櫻井は理解しました。
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櫻井「便りがないのは元気な証拠・・って、よくできた言葉だよな・・・」
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もう帰ってこないと思うのと同じくらい、いつか帰ってくるんじゃないか。
また一緒に仕事をしてくれるんじゃないかと思っていた、あの人からの手紙だと・・・櫻井には、解りました。
それから、もう大野が帰ってはこないことも、解ってしまったのでした。
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作者名：12（とうふ）
作成日時：2014年8月17日 3時
