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櫻井が膝を抱えたその部屋は、いつの間にか涙で大洪水になっていました。
それはもう水たまりなんてレベルの話ではなく、ちゃぷちゃぷちゃぷ、と水面が揺れるほどです。
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その元は涙だった水面が、ちゃぷちゃぷちゃぷ、と揺れるのは─────扉をノックする衝撃です。
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相葉「翔ちゃん！ 翔ちゃんってば！！」
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櫻井は「クソ、まだいやがる」、と眉間に皺を寄せました。
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相葉「翔ちゃん！ ねえ開けてよ！！」
櫻井「開けねぇっつっただろ！！」
相葉「なんでだよ！ 俺、翔ちゃんの事笑わせにきたんだよ？！」
櫻井「それを要らない世話だっつーんだよ……！ 俺が！ そんな事、頼んだか？！ 帰れ！！
もう帰ってくれ！！」
相葉「翔ちゃん……なんでそんな事、いうの……」
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それまで明るい声で「翔ちゃん、翔ちゃん」と呼んでいた彼の声が段々掠れていって、櫻井はギョッとして、扉の方を見遣りました。
扉で見えませんが、これまで何を言っても明るい声で「うひゃひゃ」と笑って「ねえ、ここを開けて」、と。
「俺を中にいれて」、と。
そう誘ってきていた彼が、項垂れているように思えました。
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櫻井「え…、ちょ……？」
相葉「俺、なんか……悲しくなってきた……」
櫻井「は？！」
相葉「翔ちゃぁああああん……！！」←泣いた
櫻井「はぁああ？！」
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櫻井の涙は、驚いて一瞬だけ引っ込みましたが、さっきまで明るい太陽みたいなその声が、今は泣いて泣いて泣きじゃくるのを聞いて、櫻井は段々、悲しくなってきました。
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櫻井「バカじゃねぇの？！」
相葉「う……っ、……っ、ば…、バカって言う方がバカだも……っ」
櫻井「つーか、泣きたいのはこっちなんだっつーの！！」
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扉一枚を挟んで、部屋のコチラ側とアチラ側。
櫻井と彼は、泣きました。
えんえん、えんえんと、泣き続けたのでした。
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作者名：12（とうふ）
作成日時：2014年8月17日 3時
