another story6 『ありふれた日常』 ページ7
それから一週間。
俺は大手企業に勤める社会人なので、今まで通り目まぐるしく仕事に追われる日々を過ごしていた。
あれ以来英二の実家へと行く時間も無く、アッシュと顔を合わせることも無い日々。
だけど、あの日二人でコンビニへと向かった道のりで起きた出来事は、俺の頭から離れる事が無く、彼のことを考えない日は無かった。
俺とアッシュが顔見知りで、友人だったという真実。
夢に出てくるブロンド髪の青年がアッシュかもしれない可能性。
そして、夢で見る彼との生活が"もし"抜け落ちた数年間の記憶の欠片だとするなら……。
「話が繋がる気がする……」
「何の話がですか？」
「うおぉ！」
後ろから覗き込んできた可愛らしいこの女性は、俺の後輩の秋山奏だ。
「最近、ずっとボーッとしてますよね。大丈夫ですか？」
「うん、ちょっと色々考え事しててさ」
「考え事？へぇ〜先輩でも考えたりするんですね！」
「考えるよ〜。仕事のできない後輩を持つと頭が痛いからね〜」
「ひっどぉい！！」
明るく、愛想の良い彼女は会社の中でもムードメーカー的存在だ。
色々考えて気持ちが落ちてる時でも、彼女と話すと何だか楽しい気持ちになれる。
「どうしたんですか〜？先輩！」
「何でも無いよ。今日も残業したく無ければ、速やかに仕事に戻りなさ〜い」
「えぇ〜ケチィー！」
「ケチじゃなありません！早く戻りなさい！」
後輩に気を遣わせる何て、先輩失格だな。
机の上に置いてあった缶コーヒーを一気飲みした俺は、考えていた事を払い除けるように頭を振り、気を取り直して仕事に戻った。
そして、今日も元気に残業をしてから家へと帰宅。
一人暮らしの部屋は、やっぱり少しもの寂しく感じる。
「飯はいいか。風呂入って寝よ。」
軽くシャワーを浴び、冷蔵庫に入っている栄養ドリンクを飲んでベッドへと入る。
真っ暗な部屋の中は、一定のリズムを刻む時計の針の音しか聞こえない。
目を瞑れば、またきっと夢を見る。
会社でたてた憶測通り、無くしたはずの記憶の断片が夢という形になって現れているんだとしたら。
「過去の記憶を思い出す手がかりは、夢の中にあるのか」
俺は体を起こし、棚の上に置かれた箱に目を移す。
あれは、英二が俺に「過去の事を思い出したくなったら開けてみて」と言って渡してきた物だ。
「開けてみる…か？」
another story7 『溢れる涙』→←another story5 『夢の青年』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 461人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エリンギ - 初コメです。私は20代ですがこの作品が本当に大好きでちょこちょこ更新してないかなーと思って見てました。今日開いたら更新してたので最初から読み直して更新分を楽しもうと思います。更新楽しみにしています、自分を大事に頑張ってください！ (2月27日 22時) (
レス) id: 6d5f28664b (このIDを非表示/違反報告)
ライ - 初コメ失礼します。とりあえず言えることは最高でした！！続きが気になって仕方ありません。ですがお忙しいのかと思われますので、無理のない範囲で更新楽しみにしています！頑張って下さい！！ (12月8日 23時) (レス) id: f3bce32c70 (このIDを非表示/違反報告)
彼方 - 初コメ失礼します。BFと同時進行で読んでたのでもう苦しすぎて……。お願いします、続き書いてください！あと、ユエルンくんとかシンくんもまた出てきたら嬉しいです！最後になりますが、素晴らしい作品をありがとうございましたっ (2023年1月25日 11時) (レス) @page17 id: a9705677e6 (このIDを非表示/違反報告)
A - 初めまして。一気に読んでしまいました笑こんな未来があったらいいなと幸せな気持ちになりました！続きも楽しみにしています(≧∀≦) (2023年1月6日 5時) (レス) @page17 id: d2b1f0465c (このIDを非表示/違反報告)
ココなし(プロフ) - 初めまして。この作品が本当に好きで時間を忘れて何度も読み返してます！素敵な作品をありがとうございます！！をとにかく伝えたくてコメント失礼します！お身体にお気を付けてお過ごしください (2022年1月29日 16時) (レス) @page11 id: 3932394f6b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
