another story10『月明かりの下』 ページ11
歳下に慰められる何てカッコ悪い。
それに、幾ら昔の知り合いでも記憶が無い俺からしたら赤の他人だ。
それなのに、彼が俺を抱きしめる腕に安心感があって、
払い除けたいとは思えなくて、
「記憶が無い俺をどうしてこんなに気にかけるんだ」
「何だよ、その質問。記憶が無くたって関係ない。お前は俺の大切な奴だ。それに……もう後悔だけはしなくない」
「後悔?」
「いや、何でもない。こっちの話だ。兎に角、そんな顔してるお前を一人には出来ない。家に帰るなら俺も着いて行く」
アッシュの躊躇いの無い発言に、俺の目は点となる。
今、何て言った?
着いてくるって言ったか?俺の家に?
「いや……何を言って……」
「俺は本気だ。英二にも伝えてあるから問題ない。ほら、早く行くぞ」
「お、おい!」
まるで自分の家へと向かうような軽い足取りで進んで行くアッシュの背中を俺は早足で追いかける。
自分勝手で強引で、大人びてるかと思ったら、たまにガキみたいな事を言う。
「変わってないな。アッシュは…」((ボソッ
そこまで言った所で、俺は口を止めた。
変わってないって記憶が戻った訳でも無いのに、何を言ってるんだよ、俺は。
「何か言ったか?」
「いや、何でもない」
たまに怖くなるんだ。
自分では思ってもいない言葉が、口から流れるように出る事が。
その時の声や、気持ちが、何時もよりも安らぎに満ちている事が。
「アッシュ…さっき、俺の事を大切だと言ったが、どうして俺にこだわるんだ?」
「どうしてって?」
「お前には英二もいる。記憶が無い俺なんかより、英二と居た方がきっとお前も楽しいと思う」
「そうだな〜。英二と居るのも確かに楽しい。だけど、お前と英二じゃ大切の意味合いが違うんだよ。」
「それはどういう…」
俺が掘り下げて話を聞くと、アッシュは「この話は終わりだ」と言って、強制的に話をシャットアウトした。
こういう所は、年相応だと本当に思う。
大人びた綺麗な顔立ちをしているが、中身はまだ子供なんだと感じ、俺は少しだけ安堵した。
彼の境遇は、英二から色々と聞かされていたから、子供らしい面は無いのかと思っていた。
「アッシュは、まだまだ子供だな」
「おい!いきなり頭撫でんな!てか、子供じゃねぇ!」
そう言って不貞腐れるアッシュを見ながら、俺は小さく笑い、何時もよりも軽い足取りで自宅へと向かった
another story11 『一人暮らしの部屋』→←another story9 『鳴り響く音』
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エリンギ - 初コメです。私は20代ですがこの作品が本当に大好きでちょこちょこ更新してないかなーと思って見てました。今日開いたら更新してたので最初から読み直して更新分を楽しもうと思います。更新楽しみにしています、自分を大事に頑張ってください! (2月27日 22時) (レス) id: 6d5f28664b (このIDを非表示/違反報告)
ライ - 初コメ失礼します。とりあえず言えることは最高でした!!続きが気になって仕方ありません。ですがお忙しいのかと思われますので、無理のない範囲で更新楽しみにしています!頑張って下さい!! (12月8日 23時) (レス) id: f3bce32c70 (このIDを非表示/違反報告)
彼方 - 初コメ失礼します。BFと同時進行で読んでたのでもう苦しすぎて……。お願いします、続き書いてください!あと、ユエルンくんとかシンくんもまた出てきたら嬉しいです!最後になりますが、素晴らしい作品をありがとうございましたっ (2023年1月25日 11時) (レス) @page17 id: a9705677e6 (このIDを非表示/違反報告)
A - 初めまして。一気に読んでしまいました笑こんな未来があったらいいなと幸せな気持ちになりました!続きも楽しみにしています(≧∀≦) (2023年1月6日 5時) (レス) @page17 id: d2b1f0465c (このIDを非表示/違反報告)
ココなし(プロフ) - 初めまして。この作品が本当に好きで時間を忘れて何度も読み返してます!素敵な作品をありがとうございます!!をとにかく伝えたくてコメント失礼します!お身体にお気を付けてお過ごしください (2022年1月29日 16時) (レス) @page11 id: 3932394f6b (このIDを非表示/違反報告)
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