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第六十話 ページ19





小さい頃に両親を亡くした私は、姉と二人で暮らしていた。
私が小学生だった時、姉は高校生。それ故に姉はよく遊び歩いており、私は日頃から一人でいることが多かった。
そんな寂しさを埋める為に、悪いことだとは分かっていても、幼い頃から一人で公園に出向いていた。

そこで出会ったのだ。一人俯いてベンチに座る彼を。
その容姿は今よりも倍小さく、背中からは己の孤独を隠しきれていなかった。
幼かった私には、そんなのわかる筈もなかったが。


『……ねえ、何してるの?』
「………」
『ねー!!何してるの?』
我ながら物凄く迷惑だったと思う。昔は今と違って人見知りな訳でもなかったし、相手にとっては、全く知らない女の子に話しかけられたのだから。

「……うるさい。お前は黙ることができないのか」
『お前じゃないよ、あたしは赤木A。貴方は?』
「知らない人に普通名前は名乗らないだろ」
『あっ……し、知らない人じゃないよ!今から友達になるの!』
私の慌てて考えた言い訳に若干顔を顰めていたものの、彼は渋々、といったように小さく口を開いた。

「…………とくがわいえやす」
『いえ、やす……?ふーん、面白い名前だね!』
「なんなんだ、お前」
『お家に一人だからね、退屈なんだ。家康くんこそ、帰った方がいいんじゃない?』


「…………奇遇だな、俺も"ひとり"だ」
『そうなんだ、一緒だね!じゃあ遊ぼうよ!』

今思えば、彼は同い年だった筈なのに色々な言葉を知っていたし、賢かった。
そしてお互い一人だった私達は、度々公園で会っては、たわいもない話をする仲になった。

だけど、いつからだろうか。突如彼は姿を消し、公園にも来なくなった。
当時の私は心配や悲しみが大きかったものの、同じくらいの頃から姉と過ごす時間も増え、いつの間にか忘れていた……んだろう。



改めて彼を見ると、随分大きくなったなと思う。
なんて、私は親か、と一人で突っ込む。

「その顔は…ようやく思い出したか。

俺は忘れず、ずっと覚えていたと言うのになあ」
クックッ…と笑う彼が不気味だったが、振り払うことは出来なかった。
今まであんなに酷いことをしてきたのに、昔を思い出すとどうしても手を振り払えなくて、悔しさにギュッと唇を噛み締める。
そして徳川くんは私の頭を一撫ですると、愉快そうに教室を出て行った。

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moka(プロフ) - a-yaさん» 何と嬉しいお言葉...!!私なんかの作品を何回も読み直して頂けてるなんて凄く嬉しいです🥹✨️相変わらずのゆっくり更新ではありますが少しずつ話を進めていきますので暇つぶしにでも読んで頂けたら嬉しいです🥰 (11月20日 21時) (レス) id: 29521248bc (このIDを非表示/違反報告)
a-ya(プロフ) - この作品めちゃくちゃ面白いです!何回読み直しても楽しめます❤️これからも応援しています! (10月15日 16時) (レス) id: 672b289667 (このIDを非表示/違反報告)
moka(プロフ) - さらさん» わー😭💓いつもドキドキしながら更新してるので面白いと言って下さって物凄く嬉しいです…!これからもさら様をキュンキュンさせられるよう頑張りますね🥰それに2回もコメントありがとうございます!気持ちだけでもとても嬉しいです✨ (2022年10月3日 18時) (レス) id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ホントにいつもたくさんの更新ありがとうございます!!番外編も凄く面白かったです!!榊原くんも格好よかった!!上杉くんにもキュンキュン来てます!!私も星いっぱい押したいくらいです!!でも1つしか送れない!!気持ちはたくさんです!! (2022年10月3日 9時) (レス) @page23 id: f9b4a84be1 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - mokaさん» 届いていたみたいで安心しました🥺 私なんかの小説で清正くん好きが増えているなんて……! 感激です😭 本当に本当に、ありがとうございます! 清正くん出てきたらいいね200回くらい押しますね🥰 (2022年10月2日 22時) (レス) @page23 id: bd8f0e2e75 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:moka | 作成日時:2022年9月28日 13時

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