明日のFools《ars/s.s》 (ページ33)

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Scene5 -4 ページ33

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「なに考えてんの、問題解きなさい」

「……二宮先生のことだって言ったら…怒ります？」

ちらっと先生の顔を窺う。

先生は凛々しい眉をちょっと寄せて、それから私の額にパチンとデコピンをした。

「いたっ」

「バカ言ってないで解け」

「はーい」

知っている。

櫻井先生がこの手の私のわがままに頑なに答えないでいることを。

それが私のためであることを。

愚か者同士である前に、私と櫻井先生は生徒と教師である。

倫理というのは得てしてバグのような気持ちを邪魔するものなのだ。

「怒るに決まってんだろ、そのくらい分かってろ。俺の後輩になるんだろ」

「えっ…」

こっちをちょっとも見ずにそんなことを言うから思わず手を止める。

まさか答えが返ってくるとは思ってなかった私は先生の横顔を見つめた。

ちらっとこちらを窺う先生の目と目が合う。

その目はすぐに逸れて、代わりに手が伸びてきた。

「ほら、もっと有意義な教科書を見ろ」

「わかってますよ」

グイっと頭を下げられて文句のようにそう言ってみる。

頭から離れた腕が机に戻る。私の右手とくっつきそうなところに置かれたその腕が、わざとだったらいいなと思う。

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