Scene5 愚かな僕らは恋をしない ページ30
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一月の半ば。
受験までもう間もなく。
雪が降りそうなほど外は寒い。
暖房がつけられた教室の中は外へ出ることをためらわせる。
「以上、気を付けて帰れよー」
大野先生の合図でホームルームが終わるとAO入試で一足先に受験の終わった生徒たちがカラオケだなんだと騒ぎながら出て行った。
私はそんな生徒たちをしり目に英語の授業セットを取り出しやすい場所に仕舞ってからスクバを持ち上げる。
「A、今日も勉強か」
「うん。もう時間もないし。潤くん先帰ってて」
「おっけー」
一足先に受験を終えた潤くんは無事に第一志望への進学が決まったそうだ。
最近久しぶりに一緒に登校したり下校したりしているのは珍しく私に交際相手いないからだ。
二宮先生と別れたのが去年の秋だから、もう二か月半くらいになる。
潤くんは何を言うでもなく今まで通り幼馴染として私の隣を歩いていた。
潤くんは私のことを割と何でも知っているから、もしかすると二宮先生とのあれこれも知っているかもしれないと思ったんだけど、上手く言えない時は押し黙るのが潤くんだから、何かを聞いてくることも行ってくることもなかった。
私はいい幼馴染を持ったと時々泣きそうになる。
いや、それは嘘だけど。
「石動、受験まであとちょっと頑張れよ」
「はい、大野先生。さようなら」
「さよならー、松本気を付けて帰れよ」
「はい」
教室を出て潤くんと並んで昇降口までやってくる。
そこで潤くんは軽く手をあげた。
「じゃあな、A。また明日」
「うん、また明日」
潤くんが一人で昇降口を出ると女の子が何人か潤くんに声を掛けているのが見えた。
そういえば潤くんってよく告白溶かされてる痛いだけど、彼女作らないのかな？
まぁ、私が気にすることじゃないんだけど。
そんなことをほんのちょっと考えながら私は廊下を引き返す。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年5月17日 15時
