Scene1 -3 ページ3
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ガラリと先生が保健室の扉を開く。
私にとってはなじみの場所。
「ニノー…ニノ？いないの？」
言いながら保健室に入り込む先生はきょろきょろと部屋を見渡す。
どうやら養護教諭の姿はないようだ。
「困ったな、頭痛はともかくそのほっぺを何とかしてもらおうと思ったんだけど」
そういえば櫻井先生は下に兄妹がいるって言っていた気がする。
ほっぺなんて可愛い言い方は先生に馴染んでいるのかもしれない。
「しょうがないか」
ため息みたいに呟いて先生は私をベッドまで運ぶ。
一番奥、いつも空いているベッドは今日も空いている。
まぁ時間帯も時間帯だから、三つあるベッドはすべて空いているけれど。
ベッドに私を降ろして掛け布団をかけると先生はパイプ椅子を持ってきてそこに座り込んだ。
「ほら、しばらく寝ろ。二宮先生が来るまで俺ここにいてやるから」
「べつにへいき」
「せめて平気な顔で言え」
コツンと指でおでこを叩かれる。
そんなにひどい顔をしてる自覚はないけど先生にはそう見えてるようだ。
ため息を吐く顔がちょっと困ったように眉を寄せている。
「さっきの授業中に気づいてやれればよかったな」
ぎいとパイプ椅子を鳴らして先生は顔をのぞき込んで私の額にかかった前髪を払う。
先生はちょっと誰にでも優しすぎるから時々心配になる。
そんな顔で心配するのは…ずるい。
私にそんな顔を向ける人はいない。
風邪なんかひくと顔の濃い幼馴染が呆れた顔して看病してくれたりはするけれど。
その幼馴染とは全く違う顔だ。
「平気だった」
「そうだな。平気に見えてた」
生意気に言葉をつづけた私に先生は呆れたような声を出す。
その顔は優しい瞳の色で力のない私を見下ろしている。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年5月17日 15時
