Scene3 -8 ページ18
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「知らないんなら教えてやろうか……俺が男だって」
「なに言って…」
何を言っているのか私の頭はまだ理解していない。
そもそも二宮先生が何を言いたいのかもわからない。
どうしていつも二宮先生は怒るのだろう。
何に怒っているのかを教えてほしいのに、それを知るのがとても怖い。
手が頬を包む。
二宮先生の小さな手でも私の頬なんてすっぽり収まってしまった。
動けないまま二宮先生を見上げる。
「…不安そうな顔。いい顔するじゃん」
「せんせ、っ」
ふっと影が近くなって、唇に何かが触れた。
ガラガラガラ、遠くで音がする。
足音がパタパタと床を叩く。
「そうだニノ、石動に今日のプリント…を……」
櫻井先生の声だと認識するのにすごく時間がかかった。
重たくないのはたぶん二宮先生がちゃんと自重を腕で支えているからで。
櫻井先生の姿が見えないのは二宮先生の顔が見えないほど近くにあるからで。
声を出すことができないのは、二宮先生に唇をふさがれているからで。
「ニノ…なに、してるの……？」
戸惑うような声が部屋に落ちてようやく。
私の頭は動き始める。
そして反射的に腕を突き出した。
「やめっ、」
「…っは」
二宮先生の胸を押し返す。
意外にも簡単に大きな身体は離れていった。
「あれ、櫻井先生、何しに戻ってきたんですか」
「…茶化すなよ、何してんのって聞いてんだよ」
ビリビリと空気が震えるような声がして、私はビクリと肩を揺らした。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年5月17日 15時
