Scene3 -6 ページ16
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どうしよう。
どうするべき？
悩んだ私はとっさに布団をかぶる。
シャッと音を立ててカーテンが開かれたのがわかった。
気配がすぐそばまでやってくる。
「石動？寝てるのか…？」
櫻井先生の声だ。
二宮先生のより低い声が私の名前を形作る。
布団をかぶって目を瞑って、この状態では櫻井先生の様子は分かりようもない。
どんな顔をしてるのかも。
何を考えて私を見に来たのかも。
櫻井先生が生徒想いの良い先生だから？
そうかもしれない。
「……寝れてるなら大丈夫か」
「起こさないでよ翔ちゃん」
「わかってるよ。もう行く」
二宮先生の声の後、気配がスッと遠ざかる。
スリッパがパタパタ床を叩く音が小さく響く。
シャッとまた、カーテンが動かされる音がした。
「じゃあニノ、石動のことはよろしく」
「言われなくても。俺は養護教諭だからね」
ガラガラと扉の開く音がして、やがて部屋の中が静かになる。
数拍を置いて再びシャッとカーテンが開いた。
布団の中で身体を固くする。
どうしよう。
いつ起きればいいかわからない。
「石動、三時間目はどうする？」
え、三時間目？
二宮先生の言葉に思わず身体をくるりと翻す。
布団からにょきと顔を出せば二宮先生の黒い目とぶつかった。
部屋の明るさが眩しくて目を細める。
それがどう映ったのかはわからないけど、二宮先生は真似をするみたいに優しく目を細めた。
「もうじき三時間目だぞ」
「……二時間目に、起こしてって言ったのに…」
寝起きで乾燥した口でとりあえず文句を言ってみる。
二宮先生はわずかに目をそらして「起こしたけど起きなかったろ」と言った。
嘘だ、と私は思う。
だけど「嘘だ」って簡単な一言がなんでか喉で引っかかって言葉に出すことができなかった。
「……英語」
「お前さ、そんなに具合悪くても学校に来たのは翔ちゃんの授業に出るためなわけ？」
「………そうだったら…だめなの…？」
そのくらいの自由はくれたっていいのに。
好きな先生の授業、嫌いな先生の授業。
学生なら誰だって覚えがあるだろう。
あくまでもその延長。
そのつもりだったのに。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年5月17日 15時
