Scene1 -2 ページ2
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その背中を冷めた目で見送っていたら先生が頭を掻きながら見下ろす。
「邪魔だったか？」
「いいえ、全然」
「あの男はやめとけ、石動」
「……別れたとこですから」
ズキンと頭が痛んで顔をしかめる。
「石動？」
「大丈夫です。ただの頭痛ですから」
「ちょいまて、フラフラしてんじゃねぇか」
歩き出そうとした私の腕を先生が掴む。
その手は大きくて、温かい。
「頭痛はいつから？」
「朝からです…」
「そうか……その、腫れてるほっぺはどうした」
「……一身上の都合です」
「そうか。わかった」
「ちょ、先生？」
ふいに先生がかがんだと思ったらひょいっと身体を抱えあげられた。
「え、ちょっと櫻井先生…」
「おっと危ないな」
戸惑って藻掻くとバランスを崩した先生が腕を解く。
「あの、私自分で、」
「お前鏡見た方がいいぞ。ひどい顔してる」
「…そんな…ことは……」
あんまり自信なくてうつむく。
ポンと、頭に手が乗った。
つられて顔をあげれば眉を下げてる先生の顔にぶつかった。
「ほら、黙って抱えられなさい。大丈夫、俺鍛えてるから」
「……私が重いってことですか」
「そんなこと言ってねぇだろ」
弱弱しく吐いた悪態に先生は笑う。
悪態付けるなら大丈夫だなって独り言言いながら、ひょいと身体を抱えあげられる。
言ってることとやってることが矛盾してる。
先生は力強い腕で簡単に私を抱き上げて、すたすたと夕暮れの廊下を歩く。
ゆらゆらと身体と視界が揺れている。
身体を抱く腕は当たり前に大人の男の人で。
いつも触れる同世代の男の子とはなんだか違う感覚がした。
「頭痛、朝からだっけ？」
「はい……」
顔をしかめたら先生が笑う。
「そんなになるまで我慢するなよ」
「……しゅっせき、が」
「もっと普段から真面目に授業出なさい」
「……」
それを言われると痛い。
ガンガン痛む頭に別の痛みが加わった気がした。
全く先生は余計なことを言ってくれる。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年5月17日 15時
