◆ ページ9
『もう、勝手に離れちゃ駄目でしょ？』
『だってみんな、僕から逃げるんだよ。お前は来なくていいって。お前が来ると雨が降るって』
『なにそれ。偶然でしょ？』
『そうだよ！信じてくれるの？』
『当たり前よ。それより、良いもの見つけたの。お守り代わりに買ってあげる。』
『え？いいよ、自分で買うから』
『男の子が遠慮しないの。一応お姉ちゃんなんだから買ってあげるよ』
『え、でもさっき一杯綿菓子買ってたのに。大丈夫なのお金』
『まあ、多分大丈夫！……あ、』
『………………………雨。』
アシレ「………………………ん」
目が覚めた。目の前には青空が広がっている。
あれ？
あっ、そうか。オクリが泣き疲れて眠ってしまったから、俺も草原に寝転がってたのか。
それで、そのまま寝てしまったらしい。
ゆっくりと半身を起こすと、視界一杯に草原が広がっていて、いよいよ現実離れしてるなあ、と適当な事を思った。
まあ実際、現実離れどころか、ここは現実世界じゃないんだしな。
ふと横を見ると、隣でまだオクリが寝ていた。頬に涙の痕が残っている。
……………………そんなにショックだったのか、さっきの冗談。
思わず戸惑ってしまう。
ここまで人に存在を喜んでもらえることなんて、今まで無かったからだ。
むしろ、俺が存在するだけでみんな迷惑そうだった。
だから、嬉しかった。
あんなに心配してくれて。
少なくとも、オクリにとって俺は存在して良い奴なんだ。
そう思えた。
その時。
「あなた、誰？」
後ろから声をかけられ、俺ははっとした。
オクリとは違う、少女の声だった。
振り向くと、白髪に水色の目をした少女が立っていた。
水色のバツ印のヘアピンをしている。
そして、手には特殊なマスクを持っていた。
特殊なマスク。
――――――現実世界にいるときに、感染症予防で着けていたものだった。
アシレ「！あんた、現実世界から来たのか？」
「え？うん。そうだよ」
アシレ「実は俺も、さっき来たんだ」
「そうなの？私と一緒だね。私、ミアっていうの」
アシレ「俺はアシレ」
ミアはよかった、と少しほどけた笑みを見せた。
ミア「仲間に会えて安心した。よかったら話さない？聞きたいことがあるの」
アシレ「ああ、いいよ」
ミア「じゃあちょっと来て」
そう言ってミアが歩き出す。
俺は自分のマフラーをオクリにかけてから、ミアの後に続いた。
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作者名：スター | 作成日時：2022年1月24日 21時
