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アシレは3メートル程後ろに飛ばされると、草原の上に仰向けに倒れた。

私ははっとする。手を出すつもりなんて無かったのに。酷いことをしてしまった。

すぐさまアシレに駆け寄る。


オクリ「アシレ?大丈夫ですか?」

アシレ「………………」


返事がない。


オクリ「………え?」

慌てて体を揺する。でも目を覚ます気配がない。
頭を打った?
でも血は出てない。内出血?

そう思ったとたん、目の前が真っ暗になった。


オクリ「アシレ!アシレってば…………!」


どうしたらいい?
此処にはカグヤ様もナツオリもいない。絶望摂取で助けることもできない。
現実世界に出る方法もわからない。

まさかこのまま、ずっと目を覚まさない……?

ど、どうすれば………!


オクリ「と、とにかく誰かに助けを……!」


とっさに駆け出そうとした瞬間、足首を捕まえられて、


オクリ「きゃ!」


私も草原に倒れこんだ。
顔を上げると、アシレがいたずらっぽく片目を瞑ってみせた。

………………生きてる。


アシレ「騙された」


そう言って、アシレはニヤッと笑った。
………騙した?


オクリ「まさか最初から、気を失ったわけじゃなかった……?」
アシレ「そういうこと」
オクリ「な…………」


驚きで息が止まった。
でも今度は、怒りじゃないもうひとつの感情が、私の中で爆発した。


オクリ「…………………よかった………」

アシレ「え?」


アシレが聞き返したけど、私はかまわず彼のマフラーを握りしめた。


オクリ「………………ほんとに心配したんですから!!」


そう言ったとたん、何故だか涙が溢れてしまった。


アシレ「………な、んで泣いてるんだよ」

明らかに動揺しているアシレも、声が震えている。


アシレ「そんなに心配したのか?」

オクリ「何回も言わせないで下さい。また目の前で人に死なれたんじゃないかと思って絶望したんですよ」

アシレ「そ、そんな泣くなよ。意外と情に熱いんだな」

オクリ「黙ってください。誰だって泣くことくらいあります」

アシレ「でもごめん、心配してくれてありがと」


そう言って、アシレがマフラーを差し出してくる。

マフラーってこんな使い方なのかと少し気にかかったけど、私は素直に涙を拭いた。

◆→←◇



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作者名:スター | 作成日時:2022年1月24日 21時

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