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オクリ「…………え?」
私はアシレの言葉に目を見開いた。
彼の言っている意味がよくわからない。
オクリ「………それはどういうことですか」
アシレ「2041年も、未知のウイルスで医療機関はパニクってる。だからあんたの言ってる、ナツオリを助ける術は此処にはない」
オクリ「………………そんな」
私はそう言ったきり、二の句が告げなかった。
昔の時代から何年もかかって、ようやく2041年にたどり着いたのに。
2041年に来たところで、意味なかったのだ。
あんなに時間を掛けたのに。
1人きりで得たいの知れない世界に放り込まれて、何年も歩き続けて、やっと此処まで来た。
この草原で他の女の子やアシレと出会って、やっと人が居ることに安堵したのに。
まだ、歩かないといけない?
心の奥で、絶望した音が鳴った。
私が放心している中、アシレは言った。
アシレ「まあ、もっと先の未来なら方法があるかもしれないな。まだ諦めきれないなら行ってみたら?」
オクリ「…………は」
何を言ってるんだろう。
この人は。どうしてそんな事を軽く言うんだ。
私は初めて、彼に明確な怒りを抱いた。
オクリ「そんな簡単に言わないでください。此処まで来るのがどれだけ大変だったか知らないくせに。まだ先に行けって言うんですか?」
アシレ「だって此処には無いんだからしょうがないだろ。それに、あんたがどれだけ大変だったかなんて初対面の俺にわかるわけないし」
オクリ「察することくらい出来ませんか!?何年もひとりきりで歩き続けた私の寂しさ。それともあなたは寂しい思いなんてしたことないと?羨ましいですね」
アシレ「は?それとこれとは関係ないだろ。俺だってそれくらい………!もうあんたなんてさっさと出発してくれよ」
その言葉に、何かが切れた。
私は思わず彼の肩を掴んだ。
アシレは一瞬驚いたように見えたけど、「なにするんだよ」と言って私の両手首を掴み返した。
肌と肌が触れあった感触に、ビクッとした。
さすがにアシレの方が力は強い。
怖い。
捻られるんじゃないかと思った瞬間、私はとっさにアシレを突き飛ばしていた。
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作者名:スター | 作成日時:2022年1月24日 21時