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―――――――アシレを見たとき、少し驚いた。

私と同じような和装をしているのに、カグヤ様のことを知らないのだから。

てっきり私と同じ時代から来た人だと思っていたのに、かなり先の未来から来たらしい。
じゃあどうして和装してるんですか、と本人に聞いても、「知らない」と首を横に振っていた。

そして、驚いたのはもうひとつ理由がある。

昔、会ったことがある気がしたから。

彼が持っている風ぐるまを、和の國にいた頃見たことが会った。
だから、なんとなく既視感を感じた。
本人に言うつもりは無いけれど。




アシレ「へえ、電脳世界にもこんな場所あるんだな」


アシレが青空を見て伸びをした。
私が連れていったのは、あの場所から少し離れた草原だった。
真っ白な空間に物体が浮かんでいたさっきの場所よりは、大分現実的な風景だ。


オクリ「はい、私も以前ここを見つけた時は驚きました。電脳世界に入った他の者も、ここが癒されるのか、しばしばここに来るのです」

アシレ「じゃあ、ここに来れば他の人にも会えるのか?」

オクリ「そうですね。たまに出くわします」

アシレ「…………なんだ。よかった」


一瞬、ずっと笑顔だったアシレの表情が崩れて、やけに湿った声を出すものだから、私は思わず顔をあげた。


オクリ「え?」

アシレ「いや、別になんでもない。それより知ってること、話せよ」

オクリ「……わかりました。ではまず、私が生きていた時の話をします。私が何をしていたか」


人にこの事を話す時が来るなんて。
感慨深く感じながら、私は息を吸った。






私は、カグヤ様の側近だった。
姫様の身なりを整え、側につき、何かあったときは姫様を守る。そんな役割をもっていた。

側近は私の他にもいて、ナツオリといった。
ナツオリは数少ない男の側近で、姫様の1番側にいたのはナツオリかもしれない。

2人は、愛し合っている。
私にはそう見えた。

カグヤ様は、民に絶望摂取を推奨していた。
姫様が民に注射すると、病む民たちは気分がよくなり、感謝して去っていく。

カグヤ様はそれを、「未来を創るための道具だ」と言っていた。
私も1度言われたことがあったけれど、意味はよくわからなかった。


そんな中。

突然、悲劇は訪れた。

◇→←◆



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作者名:スター | 作成日時:2022年1月24日 21時

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