remember 25 ページ28
｢俺と付き合ってください！｣
昼休憩の屋上、悪すぎるタイミングにAと遊作は咄嗟に貯水タンク裏へと隠れた。
数分前。
屋上にいる理由、それはいつも通りで、Aと遊作は昼食を持参で屋上で他愛もない話をしていた。Aの手にはパックのいちごみるく、遊作の手にはホットドッグ。ふたりがそれを食べきり、くつろいでいた時だった。急遽、屋上へと向かってくる足音が聞こえたのだ。
｢…ふ、藤木くん｣
｢……こっちだ｣
困った顔で遊作を見つめるA。遊作は咄嗟に彼女の手を取って貯水タンク前へと誘導する。ここで二人で食べているところを誰かに見られたら、揶揄われるかもしれない。この年齢の少年少女が一番に考えることだ。それはこのふたりにも通用する。もし、誰かに知られたら目立ってしまう。目立つのは面倒だ、色々と。二人とも考えることは一緒で。
｢…足音から二人。上靴の擦る音、癖、特徴から二人組みは…男女一人ずつ｣
｢谷町、お前……｣
Aが一人、ドアのある方へと耳を澄まして呟く。遊作はその言葉に驚き口を開くも、ドアの開く音に阻まれた。
Aの言う通り、声の主は男女の二人組。男性の方が女性に話を切り出し、本題へと入っていく。
ここで、冒頭の台詞だ。
｢俺と付き合ってください！｣
その言葉にふたりは生唾を飲む。驚いた、こんな所でベタに告白する奴がいるとは。Aは後ろを振り向くが、そこは貯水タンクの背中で姿は見えない。隣の遊作はバレないように知らぬふりで息を殺してる。
｢ご、ごめんなさい！｣
聞こえてきた悲しそうな声と、去っていく足音。まるで恋愛ドラマのワンシーンの様な光景。ふたりは気まずい雰囲気の中、口を閉じている。残った男子生徒がゆっくりと階段を降りていく音を背にふたりは貯水タンクにもたれかかり、ずるずると座り込んだ。
｢いやぁ…うん。頑張ったね男子生徒Aくん、君はすごい｣
｢振られてたけど｣
｢こういうのは勇気の問題だから。次の恋に進む勇気！｣
ぐっと握った拳を振り上げて元気よく言うAに遊作はため息をつく。次の恋に進む勇気、そんなもの果たして必要なのか。恋愛一年生の遊作にはわからない。自分だったら、叶わなくてもその心は捨てたくないと思うだろう。相変わらずにこにこと笑っているAの頬を軽くつねり、そっぽを向く。
俺にはそんな勇気、いらないな。
続く (更新停止中)
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暁(プロフ) - とても面白いです!!次の更新楽しみにしています!! (2019年10月8日 12時) (
レス) id: dd077ce83e (このIDを非表示/違反報告)
はな - 続き読みたいです！面白かったです (2019年4月16日 1時) (レス) id: 87d0cab806 (このIDを非表示/違反報告)
ヒナコ(プロフ) - 続き楽しみにしてます！頑張れ〜恋愛一年生、遊作！ (2019年4月6日 21時) (レス) id: c6a15fa920 (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - ねこみこさん» コメントありがとうございます。お返事が遅れてしまい申し訳ありません。とても嬉しいお言葉ありがとうございます、ご期待に添えるよう更新頑張ります。 (2019年4月1日 1時) (レス) id: a80e55b6ef (このIDを非表示/違反報告)
ねこみこ(プロフ) - とても面白いです更新頑張ってください！ (2018年7月3日 22時) (レス) id: 185c2ad794 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しゅりんぷ | 作成日時：2017年9月22日 17時
