け い び い ん さ ん

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『あっ！…私、そろそろ戻らないとっ！』



大毅さんと過ごす時間が
あまりにも穏やかで
何気なく腕の時計を見た私は
慌ててベンチから立ち上がった。



『大毅さんっ……いろいろ、ありがとうございましたっ。

私……なんだか、頑張れる気がします。』



そう言って
まだベンチに座っている彼に
深々と頭を下げると
目尻がしわくちゃになるぐらいの笑顔で







「……お昼、ここで待ってますね。」



……と、彼はそう言った。







………



…………………







『…ごめんなさいっ、戻りました！』



大毅さんと別れ
慌てて受付へと戻れば
「もう、いいの？」と
心配そうに私の顔を覗き込む同僚。



『うん、大丈夫っ。…ありがとう。』







「あっ、そういえば！！……さっき、中間建設の……神山…様？だっけ？…帰り際に “ 桐山さんはいらっしゃいますか？ ” って、Aのこと探してるみたいだったけど？」



『えっ？神山様がっ？』



同僚のその言葉に
私はヤバいと思い
慌てて
先程渡された神山様の名刺を取り出した。



きっと、さっきの失言だー。



私のあの失礼な態度で
神山様怒らせちゃったんだよね、絶対。



「やっぱり、契約はしません」なんて
言われたらどうしようっ…。







「…A、大丈夫？顔、真っ青だけど。」



『わ、私っ、ちょっと電話してくるね！』



「う、うん……いいけど。」







神山様の名刺と携帯を握りしめ
私は急いで会社の中庭へと出た。



そして
名刺に書かれた携帯番号を
丁寧に丁寧に押した。







お願いします、神様！



どうか、あの方が怒っていませんように…。




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