009:いつの間にか ページ9
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独りになった俺は
一瞬見せてくれた笑顔と
断られた現実で
頭がいっぱいだった
彼女の居ないコンビニで
絆創膏を買って
逃げるように
マネージャーの車へ戻った
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マネージャー「行きますよ?」
山田「ん……、早くだして」
なんでこんなにソワソワして
なんでこんなに悔しいのか
見えそうで見えない答えに
思わずため息がこぼれる
名前すら知らないのに
心臓を掴まれたような気分で
いくつかの日付を跨いでも
気持ちは晴れなかった
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──────────……
有岡「はい、山田の負けー!」
中島「負けー!」
山田「……マジかよ」
リハーサル中
買い出しの勝負に
のったのが運のつき
見事に一人負けした俺は
重い腰を上げて
カバンから財布と帽子を取り出した
山田「行ってきまーす、」
この前のことがあってから
あのコンビニは避けていたのに
だって
会ったところで気まづいし、さ
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山田「……わ、」
自動ドアをくぐり抜けた途端
あの子の姿が目に入る
今日に限って居るのかよ……
二人の分と俺の飲み物を抱えて
重い足取りでレジに並んだ
「お待たせしましたー」
飲み物を置くと
俺に気づいたようで
ふと目が合うと
この前と同じ柔らかい表情が佇む
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「676円のお返しで……」
山田「あの、」
「……?」
山田「これ、今さらだけど……」
思わず
財布に入れっぱなしにしてた
一枚の絆創膏を差し出した
もう君には必要ないって
わかりきってた
わかりきってた、けど
「あ、ありがとうございます……」
君が優しい顔をして
その瞬間、俺の口元を緩ませるから
山田「また来ます……、桜井さん」
次第に耳が熱くなった俺は
言葉で熱を逃がすことしかできなくて
小さく会釈をして
足早に目の前から離れた
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コンビニを出て風にあたると
熱かった耳に涼しさが流れる
山田「桜井さん、……か」
やっと知れた、その名前を呟けば
甘ったるい気持ちが
心を一瞬で満たして
口元を結びながら
鼻歌交じりに光の照らす方へ急いだ
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▼SOLA(プロフ) - 有岡担さん» コメントありがとうございます。いま連載中のお話が二つあるので、そのお話が完結したら検討してみますね。 (2020年5月17日 15時) (レス) id: 52a307bcb1 (このIDを非表示/違反報告)
有岡担 - めちゃくちゃ面白かったのでafterstory読みたいです! (2020年5月17日 2時) (レス) id: a06e75bb6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:▼SOLA | 作成日時:2019年5月30日 21時