008:ショートヘアちゃんの名前 ページ8
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スタジオに戻っても
ずっとあの子の表情が消えない
いくら小さな傷とはいえ
あんな表情をされても
ちゃんと謝るべきだった
動揺して
名札確認する余裕もなかったなんて
カッコ悪すぎるだろ、俺
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山田「お疲れ様でしたー、」
リハーサルの後
一人で雑誌の取材を受けてたら
もう、こんな時間
散々踊って
散々話した俺は
重力に従順な身体で
マネージャーの前を
小さく歩いていた
人気のない駐車場
マネージャーの車の奥に
ひとつ、人影が通る
山田「あ……」
マネージャー「どうしました?」
山田「ごめん、すぐ戻る」
マネージャーに捨て台詞を吐いて
俺は思わず走り始めた
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山田「あ、あの……!」
「あ……、」
やっぱりコンビニの、あの子
ショートヘアちゃん
俺に気づいたのか
一瞬しか目が合わない
「……、」
山田「さっきは……本当にごめんなさい」
「え……」
山田「ほんとは、さっき言うべきだっだんだけど……」
「ふふ、……大丈夫ですよ」
目が合うと
目尻を下げて優しく微笑む
その表情に
思わず息を飲んだ
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山田「あ、それと……」
「……?」
山田「お礼したいから……今度メシでも……」
「……、」
山田「あ、いやっ……よかったら……連絡先聞いてもいい?」
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かっこいいドラマの台詞とか
バラエティでやった決めゼリフとか
数えられないほど
やってきたのに
驚くほど、なにも出てこなくて
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「ごめんな……さい……」
え……?
「……失礼します、」
足早に背を向けられて
小さくなっていく背中は
俺の言葉を待たずに
どんどん遠くなっていく
……嘘だろ
え、断られた……?
俺、断られたよな……?
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山田「マジか……」
連絡先の交換を断られたことも
一瞬見せてくれた笑顔に
うるさくなりはじめた鼓動も
一度に全部は飲み込めなくて
そんな俺は、また
ショートヘアちゃんの名前を聞けなかった
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▼SOLA(プロフ) - 有岡担さん» コメントありがとうございます。いま連載中のお話が二つあるので、そのお話が完結したら検討してみますね。 (2020年5月17日 15時) (レス) id: 52a307bcb1 (このIDを非表示/違反報告)
有岡担 - めちゃくちゃ面白かったのでafterstory読みたいです! (2020年5月17日 2時) (レス) id: a06e75bb6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:▼SOLA | 作成日時:2019年5月30日 21時