030:にぎった手から ページ30
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美味しそうに
タルトを食べるAちゃんを眺めてると
ふと目が合う
「山田さんも、一緒に食べましょ?」
山田「うん、ありがと」
不思議なくらい
仕草ひとつひとつが愛おしくて
気持ちが溢れそうで
山田「……ん、うまいね」
「あ、あの……」
山田「……?」
「くち……ついてます」
山田「え、マジ?……どっち?」
「ふふ、こっちです」
笑いながら俺の口元を指さす
Aちゃんの表情に
思わず俺は華奢な指先をつかんだ
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「……山田さ、ん……?」
もう、無理
会いたくて会いたくて仕方ないのに
俺ん家にきたAちゃんが
いけないんだからね?
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掴んだ手で口元を拭う
Aちゃんの瞳は丸みを帯びた
山田「……ね、とれた?」
「とれ……ました……」
頬を赤らめるAちゃんが
俺の気持ちの蓋を開けていく
山田「ねぇ、なんで来てくれたの?」
「あ、えっと……」
山田「俺ん家、って分かってたでしょ?」
「……はい、」
山田「……そんなことされると」
「……?」
山田「俺、期待するよ?」
テレビもついてないリビングで
俺の心音が響くような気がして
Aちゃんと繋いだ手は
まだ離せないまま
二人の間に空気が流れてく
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ゆっくりAちゃんの髪を撫でながら
そっと顔の距離を近づけるのは
ズルい、だなんて言わないでほしい
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山田「……Aちゃん、伝わってる?俺の気持ち」
小さく頷く瞳が
俺から離れない距離が
気持ちに拍車をかけて
山田「俺は、Aちゃんが好きだよ」
見つめ合う瞳も
初めて近づいた距離も
思ったよりずっとずっと緊張して
音のない空間が、それを煽ると
真っ直ぐ俺を見つめる
Aちゃんの唇が、ゆっくり動いた
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031:早く俺の、に→←029:傍から見れば 【Daiki】
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▼SOLA(プロフ) - 有岡担さん» コメントありがとうございます。いま連載中のお話が二つあるので、そのお話が完結したら検討してみますね。 (2020年5月17日 15時) (レス) id: 52a307bcb1 (このIDを非表示/違反報告)
有岡担 - めちゃくちゃ面白かったのでafterstory読みたいです! (2020年5月17日 2時) (レス) id: a06e75bb6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:▼SOLA | 作成日時:2019年5月30日 21時