▼black or white ①【完結】 (ページ10)

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010：アイツの残り香をページ10

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ダイキの客の気持ち
少しだけ、わかった気がした

ニコニコ太陽みたいに笑ったかと思えば
上手く甘えてきたりして
時に男らしさしか見せない

ギャップ、って言葉じゃ
片付けられないくらい
底知れない魅力の引き出しを
隠し持っている

……だから
色んな表情を見たくて
店に行くんだろう

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「……参ったな」

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一緒に住むことを決めた時
思ったよりも私は
浅はかだったようで

早速、ダイキの魅力の端を
見つけてしまった

見つけてしまった、その瞬間に
素の自分を
見せてしまった気がして

どうしようもなく
歯痒くて
どうしようもなく
後ろ髪の引かれる気持ちに
思わず独り言が口をついていた

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接近戦なんて
店で働いてからは得意な方
……だったはず

一般サラリーマンの
平均小遣いじゃ
足りない金額を払わせてるんだから

それなりに
見えない部分でも頭を働かせて
今まで働いてきたつもり

だけど＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

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＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿prrr

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『なーに』

山田『(源氏名)、引越し終わったかー？』

『終わったよ、今さっき』

山田『おー、お疲れ』

『……なんかあったの？』

山田『今日休みでさ、近いとこで買い物してたから……引越し祝いでも持ってってやろうかなーって』

『あー、うん引越し祝い……ね』

携帯を片手に
リビングを見渡すと

どう考えても
一人暮らしには見えそうにもない

明後日、店で
山田に言えばいいと思ってた矢先の
思わぬお節介に
薄いため息が鼻を抜けていった

山田『……なんか予定あった？』

『いや、ないけど……どうせならBAR行かない？』

山田『あー、(源氏名)が行きつけのとこ？』

『そうそう、ほらウチ近くなったし』

山田『しばらく行ってねぇし、そうすっか』

『支度したら向かうから、先行ってて？』

山田『おっけ、んじゃまた後でな』

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……とりあえず
家に来るのは回避できたから

さっさと支度しよ

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急回転した脳裏に
一安心しながら
ウォークインクローゼットを開けると

鼻をついた残り香に
少し胸を掴まれて

思わず
呆れながら
乾いた笑いで塞ぎ込んだ

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