029：正解は、どこかに ページ30
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音を鳴らせる人なんて
もちろん、一人しか居ない
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なにもできないままで居ると
ぽつり、言葉と一緒に
ダイキが横を通った
ダイキ「……着替える」
「うん……」
どうにか伝えた返事は
聞こえてたのかも分からないまま
ダイキは部屋に消えていく
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素直に
やっぱり行かないで、って
もう少しだけ一緒に居て、って
今さらでも
言えばよかったのかな……
電話の時から
どことなく違和感は感じていて
ダイキが仕事に行くのは
正直、寂しかった
だけど
……私、ただの同居人だから
引き止めていいのか
すぐには、分からなくて
思わず
あんな言葉がクチをついて出た
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ダイキ「(あなた)、」
「……、」
部屋から出てきたダイキと目があって
短い廊下の上で
目が合ったまま
少しだけ時間が流れた
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ダイキ「ったく……」
ため息混じりに
ダイキは少しずつ近づく
玄関から上がったばかりの足が
少しだけ後ずさると
その瞬間は
しっかり見つかって
あっという間に
手首がダイキに捕まった
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ダイキ「なんで逃げんの、お前」
「逃げてない、よ……」
ダイキ「うるせぇな、……ほんと」
言い終わる前に
気づいたら
ダイキの腕に包まれた
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ダイキ「……すぐ帰ってくる」
「うん……」
ダイキ「行きたくないのは、俺もだから」
「……え？」
ダイキ「だから、俺だって(あなた)のこと置いて行きたくねぇの」
「ん……」
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思わぬ方向から降ってきた言葉に
少し恥ずかしくなって
少しずつほどける腕の中で
ゆっくりダイキと顔を合わせた
ダイキ「……そろそろ行くわ」
「うん」
ダイキ「いい子で待ってろよ？」
「……わかってるよ」
あやされたのが
なんだか悔しくて
少しだけダイキの肩を押すと
ダイキ「……可愛いやつ」
無防備な頬に
ダイキの唇が触れる
「ちょっ……！」
柄にもなく動揺すると
ダイキは
前とは違った匂いを残して
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ダイキ「んじゃ、行ってくる」
一瞬だけ小指を繋いで
玄関をあとにした
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作者名：▼SOLA | 作成日時：2019年4月3日 11時
