全能物語【月の欠片】 (ページ3)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:715 hit

２話ページ3

｢ねえ、アゼラ様。ばあ様が起きて、と言っていたわ｣

刹那、アゼラの脳内で、ぐわんぐわんと少女の声が、こだまする。聞いたことのない声、と思った刹那、アゼラは突然自分が起きたことと、起こした少女に、驚愕した。

｢あんた、誰よ｣

そう。アゼラを起こしたのは、見ず知らずの小さな幼女だったのである。誰、と首を傾げる幼女。その様子を観察しただけで、アゼラは、幼女の不思議な設定を知る。

｢ヘエ、あんた、親に捨てられたのかい？ばあ様も、捨て子拾ってくるなんて、物好きにも程があるわ。どうやら、住んでいたところは、アントワープ北西、エドリゴ。んでもって、あんたの母親は、【魔】か【技】だったらしいねえ。あんたが名前を忘れたのは、人為的なものだとしか思えない。｣

続けようとして、アゼラは言葉を切る。目の前の少女は、その体とは比例しない、大人びた顔で微笑んでいたのだった。

｢そうね、大体正解。でも、私は捨てられたわけではないの。おんなじ、【智】どうし、仲良くしてね？アゼラさん｣

捨てられた訳ではない、ではなぜ――――と考え始めたのものの、答えはすぐに出てくる。そうか、あの子は死にたがりなのか。

夜空の星を粉にして、それを振り撒いたような髪をしたその子に、私は言った。

｢そうね、宜しく頼むよ、今世紀の【月の欠片】さん｣

着飾った笑顔の花が、慎ましく咲いた。