【忍たま】魔界之小路先生が通販で失敗したことから始まるお話 ③ (ページ32)

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その後、女性が立つ舞台に穀物やお酒、そして薄い桃色の小ぶりな花が納められた所も彼は見守った。自分と同じくらいの歳の、緊張と可憐さの入り混じった空気感を纏った女の子達が奉納をしていた。

やっぱり何かすごいことが行われていたんだ、と彼は思った。今の彼が持つ語彙で説明しようとすれば、“崇高な儀式”と言い表すだろう。

そう感心している間に、女性が舞台から降りようとしていた。松明で灯された舞台から離れるにつれて、その人の姿は影になっていき、徐々に落ち着きを見せて行った。

そこまで見届けた所で、彼ははっとした。

女性の頭につけられていた髪飾りが、まるで違う表情を見せていたのである。

舞台の上では、松明の明かりを映して赤みを帯びていたように感じた。その飾り自ら灯りを灯している、と思ってもおかしくないほど鮮やかで、衣装の中でも一際存在感を放っていた。

しかし、舞台から離れる女性を目で追うに連れて、その赤みはどんどん薄くなって行った。そして気が付いた時には、色が抜けてしまったのではないかというくらい、随分と白色に近いものになっていた。

そういえば、さっき舞台に奉納されていた花と似た形をしている気がする。見比べると、松明の明かりで彩られている事を差し引いても、その髪飾りと花がそっくりであることが見て取れる。

後に親から聞いた所、あの花は馬酔木というもので、あの場にいた人はアセビと呼ばれる人が大半であったらしい。あの時教えてあげようとしたけどすごく熱心に見てたものねぇ、なんて事も言われた。

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中在家長次は、忍術学園に入学するよりも何年か前の昔のことを思い出していた。

幼いころの記憶というのは年月が経つごとに靄がかかったようにぼやけたり、他の記憶と混同してしまったりして正確に思い出せないことがほとんどである。

長次が思い出した記憶もまた、断片的なものであった。

それに、明るさが違えば物の見え方や色味が変わって見えることなんて深く考えなくても当たり前のことである。だとしても、幼い自分は確かに感銘を受け、少なからず感情が揺れ動いたのである。

そして、伊作から傷ついた髪飾りを受け取った時に、静かに留められていたその記憶が思い出されたのだ。

自らの手に収められている小さな飾りは、限りなく白色に近い、薄い桃色をしていた。