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前回と比べて格段に散らかった部屋に驚く。
整頓されて置いてあったクレーンゲームの景品が転がっている横には、ハンガーに掛かっていたはずの紫のエプロン。
久しく見ていなかった制服がラウール達を思い出させるが、この散らかりようは何だ?
「ほらフリーズしてないでこっち座ってよ…ってソファーも埋まってたか」
あちゃ〜とか言いつつ片付けているそこは、ゲームや携帯の充電コードがぐしゃぐしゃになっている。近くにはお菓子の袋が落ちていて、なんとなく覗いた下には靴下の片割れ。
「お、探してたやつ。ソファーの下覗くとか母ちゃんかよ。分からんけど」
「結構俺の中では健全なイメージなのに」
「ちっせぇ頃から親は仕事だったから、うん。もう照は床で」
「どうも」
客に床を勧めた自分は座椅子に座り、話し始めた。
まず病院にいた理由だけど、阿部ちゃん、慣れないから亮平でいくけど、と俺が実験の対象だったから、お互いを知ってたの。
物心ついた時には施設にいて、亮平もそう。ま、Ωとαが揃ったら実験の内容はね。
亮平も俺も同じようなタイミングで察して、でも亮平はフェロモンダメじゃん?
発作って感情がブレた時になりやすくて、だから俺は色々受け流すのを頑張った。
ちょっと人間やめれそうなレベルで無だったよ。顔は笑ってたのに。
そんなある日、亮平が言ったの。「このままじゃ2人で潰れていくだけ」って。俺は施設の実験動物扱いに何とも思わなくなってた。結果が思わしくないのは俺のせいで、亮平がそんなに思いつめなくても良いって返した次の日、カミングアウトよ。
「俺の体、フェロモンを受け付けません」
必死に隠してたじゃん。最初に秘密にしてって言ったのそっちだし。
で、サクッと引き離されて、籍だけ置いてた母校(?)に入ると。
照たちでいうと、翔太が消えたあたりか。亮平が偶然見つけたみたい。
あの子、プチ家出中らしいけど。
「は!?」
「夜あたりに舘さんから連絡くんじゃない?Sunにいるから大丈夫よ」
ひらひらと手を振って話を終わろうとするが、流されてやるつもりはない。
「てか、自分の話しろよ」
「え…?」
珍しい間抜け面。
やっぱり身の上話でも他の人を気遣っているふっかは誰かが支えないといけない。
顔を見るに、無自覚だし。
約1か月間あっためた台詞、言っても良いかな。
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作者名:べす | 作成日時:2021年3月31日 16時