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stay with me [iwfk] ページ43

血相を変えて飛び込んできた俺に驚いていたものの、事情を伝えると全員が素早く動いてくれた。そのおかげで、10分も経たない間にふっかの所へ走って行けている。
開け放たれた扉から見たのは、床に倒れている2人。そして甘い香りがしない。


「馬鹿じゃねぇの」


この言葉を向けるべきは、ふっか?俺?床に転がっている薬のシートを見て思う。
案の定、即効性の代償にとんでもない副作用を持つ抑制剤を飲んでいた。意識を飛ばすのはまだ良い方で、だいたいは強烈な吐き気だったり、呼吸障害が起きたりする薬。生死の縁を彷徨うことになったケースも少なからずある。
αである俺が知るほどデカいニュースになった代物。

俺が戻ってくる前にケリが付いたことは、薬の効果の絶大さを意味する。正気に戻った一般人に襲われるほどふっかはトレーニングをサボってない。


「こんなデカいリスク背負ってまで抑制剤飲んで、フラフラになって相手倒して。ぶっ倒れる時にまずいとこ打ったり、逆にやられるとか考えなかった?」


俺、そんなに頼りない?

そう言えるのは、まっすぐ助けたい人の元へ駆けつけた奴だけ。
何よりも大事にしたい。そう思っていたはずだった。好きだ、と確信するのが遅すぎた。

元々白い肌が更に血の気を失っている。見ていられなくて、侵入者の状態を確認しに行く。警察はまだだろうか。
手と足をタオルでなんとなく縛り、できるだけドアからも俺たちからも遠い場所に置く。
逃げられた時のために写真を撮ろうとして、ふっかが身じろぎした気がした。


「あ、照だ」
場にそぐわない第一声。
「っ、照だよ、分かる?」
「もちのろん」
古めの返しも、やっぱりこの状況からは浮いていた。


「ちなみにどこも打ってないし、ペットボトル投げたらクリーンヒットで触ってすらないから」
「そっか」


沈黙。
500mlの水で意識を刈り取るって、どんな投げ方だよ。
優しいふっかが全力で物を投げつけるほど、怖かったのか。
そう思うと、1対1にした罪悪感で何も言えない。


「照ってばほんと過保護なんだから」
「ふっかだからだよ」
「そういうとこ…」


都合の良いように言う俺に呆れたのか、単に疲れたのか、また目を閉じてしまった。
これから嫌でもさっきの話をしないといけない。
だから、少しでも休ませてやりたい。
今俺にできるのは、大して柔らかくもない太ももにそっと頭を乗せてやることだけ。

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作者名:べす | 作成日時:2021年3月31日 16時

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